39.嘘は時に後戻りができなくなってしまうものであり、時に大切な人を守るための盾になり得るだろう ページ10
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プシュッと缶ビールのプルタブが開く音と
カズが私の横に身体を沈めさせたのはほぼ同時だった。
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和也「アイドルと妻が二人きりでいる」
「…」
和也「しかも自分は不倫現場を見られてしまった。…となると金目当ての誠は焦って麻里の手を離さないよう再確認するだろうなって」
「…」
和也「だからわざとあそこを指定して、鉢合わせさせた」
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ゴクリとカズがビールを喉に流し込む姿。
私の手元には未開封の缶ビール。
さっきカズが私にくれたもの。
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和也「多少の演技はしてもらう予定だった。でもあそこまでさせる気はサラサラなかった」
「…」
和也「…見る限り、淀みなく嘘を吐いてたAを見て誠は……引いてた」
「…」
和也「デリカシーないかもしんないけど。それで泣いてたんでしょ」
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プシュッとプルタブが開く音がしたのは、私が開いてない缶ビールを開けたから。
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「…本当、デリカシーな」
和也「…嘘をつくことは悪いことじゃない。嘘も方便って言葉もあるぐらいだしね」
「…」
和也「欲しいものは取り合うし、みんな結局自分が一番可愛いから守るための嘘だってつく」
「……」
和也「今日のAの嘘は、自分のための防御だと思ってるだろうけどそれは違うよ」
「…え？」
和也「あれは、誠を守るための嘘だった。いざという時、Aは誠のために犠牲になろうとした」
「…」
和也「…本当に、好きなんだね。あの男のこと」
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ふっと鼻で笑ったアイドルは。
もう空になった缶ビールを怪訝そうに見つめて、立ち上がり冷蔵庫の方へと向かう。
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「……いいこと言うじゃん」
和也「あのなぁ。んな人を血も通ってない冷徹人間みたいに言うなや」
「…やるよ」
和也「あ？」
「私、やる。誠くんとサヨナラするために」
和也「…」
「好きだから、別れるの。でもそれは一人じゃできないからカズに手伝ってもらう。今日みたいなことがあっても、もうへこたれない」
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ばたん、と冷蔵庫が勢いよく閉まる音。
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和也「当たり前だっての」
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和也「俺が見込んだ女なんだから」
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カズの手には、缶ビールが二本、あった。
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