49.イト ページ20
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「今度こそ、帰ろう…」
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思わぬ来客によって、帰宅が憚られたけど今度こそ。
勿体無いのでシャンパングラスを揺蕩う、高級シャンパンをグイッと勢いよく喉に全て流し込む。
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…それより、カズも来て大野さんもいるなんて。国民的アイドルの五分の二がいるパーティーって…
やっぱりそこそこ名の知れた大きいパーティーなんだ…。
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場違いだ。場違いすぎる。
なんでカズが私をここに連れてこようとしたのか、意図が全く見当たらない。
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そそくさとシャンパングラスを預けて、カズを探してみたけど彼は一番奥にいて
何やら大御所感が漂う方とグラス片手に談笑中。
監督さんかなんかなのかな…？って思いながらもやっぱり私の知ってるカズじゃないから面白くなくて。
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(…ん？…面白くない？)
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足取りをピタリ…と止めて、違和感を覚える。
面白くない、ってなんだ？
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何が私はそんなに気に食わないんだ？
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ふと感じた、気持ちが悪い心の「ズレ」。
それは僅かだけれど確かに「ズレ」で。
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「ーーーー…あのー…」
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今日はやたらと背中越しに話しかけられる日。
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「さっき、にのみやさん、と一緒にいた方ですよね…？」
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大野さんとは違う、凛とした華のある声。
胸のざわめきを覚えながらゆっくり、振り返れば。
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莉緒「あ、すみません、いきなり！初めまして、モデルの青山莉緒って言います」
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ーーーー…知ってる。同僚が買ってたファッション雑誌のカバーガールをしてた子だ。
テレビとかにも最近よく出てたはず。
…すごい可愛くて、顔小さくて細くて、…お人形さんみたい。
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「あ…初めまして。梅宮と申します…」
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なんでだろう。何もしてないのに肩身が狭くなる。
ドレスとかも同じネイビーなのに倍可愛く見える。
カズと共演した子かな。適当に交わそう。なんて私が甘かった。
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莉緒「あの。」
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気づいたことがある。
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莉緒「梅宮さんは、二宮さんの彼女さんですか？」
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僅かに心にできた「ズレ」は本人の知らないところで、大きくなり
やがて本人さえも侵食してしまうようだ。
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