47.味噌汁 ページ18
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「落ち着く………」
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カズのここで待っててという言葉はガン無視して
私は辺りをキョロキョロ見渡した結果、会場のあんまり人がいない隅っこの壁にもたれかかっていた。
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基本、参加者の皆さんはテーブルに群がっていたりして壁なんかに見向きもしない。
まだまだ半分残ってるシャンパンをゆらゆらと揺らしながら
アルコールが程よく回って来てぼんやり、意識が遠のく。
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なんでこんなとこにいるんだろう。
いつもだったら会社に出勤して、同僚と安いランチを食べて、昨日見たドラマなんかで盛り上がって
仕事して、満員電車に揺られて家路を辿って。スーパーの安売りで惣菜ゲットして家に帰って、テレビを見てる。
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ーーーー…なのに、なんで。
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「…やっぱり帰ろう」
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幸い、今は見張りのカズがいない。帰るなら今だ。
もうこんなとこ、息ができない。酸素が少なすぎて窒息死してしまう。
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コツン…と赤いピンヒールを再び鳴らした瞬間。
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はじめまして。
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不意に背中越しに、柔らかい声が聞こえて
反射的にくるり…とゆっくり振り返る。
…振り返る。
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私の瞳孔が、これ以上ないってぐらい開くのがわかった。
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「さっき…、ニノと一緒にいたよね？」
「…え、っと…、私CM会社の」
「そういう茶番みたいなのいらないから。どうせ羽柴くんの入れ知恵でしょ？」
「……」
「図星だ」
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くふふ、って笑いながら着実に私との距離を縮めてくるその人。
テレビで見るのと、目の前にするのとじゃ印象が全然違う。
スッキリとしたジャケットを羽織って、私と同じシャンパングラスを片手に持ってるその人。
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「味噌汁ちゃん、でしょ」
「…はい？味噌汁…？」
「君、名前は？」
「え？」
「なまえ。きみの」
「…梅宮、です」
「それ、苗字」
「……A、です」
「俺のこと知ってる？」
「…もちろん」
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「大野…さん、ですよね…？」
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恐る恐る、私がそう名前を紡ぐと
目の前にいるその人は満足気に頷いた。
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