198 ページ31
ナワーブside
「これが俺の演繹衣装、か。心地としては普通だな」
鏡の前で灰色の軍服を着た男がその場で回る。
現役だった時に着ていた服とそっくりで思い出される記憶の数々に頭が痛くなる。
「マーサの奴、中庭からちょっと行った所にいるって言ったけど何処だよそれ」
姿を消す言葉と共に蛍の入った小瓶を机の上に置いて外に出た。
ラルは何て言うだろうか？
過去に何度か会ってるわけだし懐かしいの一言ぐらいかけてくれるだろ！
「おー！お前かっこいいじゃん！」
「そうか？」
「おう！あ、ラルを探してるか？ラルならこっちでマーサと的当てやってたぞ！」
「的当て？」
「銃はおもちゃみたいだったけどな……って、ちょっとおい！」
銃、という言葉を聞いて真っ先に前に走り出した。
あいつ、またやらかしてんじゃねぇだろうな！？！？
確かに中庭から少し行った所にソレはあった。
ガラス張りの少々大きめの部屋にマーサとラルがいて、2人の目線の先にある的を交互に撃っている。
中の声は聞こえない。
結構人だかりが出来ているが中に入るという行為は難しめのようだ。
「ナワーブ」
「イライ！なぁ、こんなのあったか？」
「べハムフィールさんがナイチンゲールに頼んで作ってもらったんだって」
「へぇ」
「こうして見ると、彼女が男性だと明かされても信じれないよ」
手に収まるくらいの小型の銃を数メートル先の人形に向ける。
解放された弾は人形の片目を抉り抜いた。
精度の高さに驚いていると、こちらに気づいたマーサが入ってきてと手招きした。
簡単には壊れなさそうな鉄製のドアを開けて中に入る。
「お前場所の伝え方下手すぎんだろ……。ってかここで何してたんだ？」
「彼女に少し練習相手になってもらってたの」
と言ってラルを振り向かせる。
こっちを向いたその顔にプラスの感情は無く、ただ聞き取りづらい言葉が口から漏れただけだった。
俺の方も一切見ずに出て行こうとするその腕を逃すかとがっちり掴んだ。
『離して下さい』
「俺的にもこの衣装はなんかなぁって思うんだ。ちょっとあの頃を思い出させるってか？」
『離せと言ってるのが聞こえないのか？』
明らかに変わった声色にビクッとなって思わず力が緩む。
スコープを通して見えたラルの目は今でも覚えている。
そう、今みたいな。
おどろおどろしい雰囲気を漂わせた目。
こびりついて離れやしねぇ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 122人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白狐-bilyakko-(プロフ) - リパ推しの雪さん» ありがとうございます！(*´`)更新頑張ります！！ (2021年3月1日 9時) (
レス) id: 6701540cff (このIDを非表示/違反報告)
リパ推しの雪 - すごい素敵な作品ですね！更新頑張ってください！応援してます！ (2021年3月1日 5時) (レス) id: e92c1b8c9b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白狐ーbilyakkoー | 作成日時：2021年2月27日 1時
