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「そうだ、ラルに伝え忘れていたことがあったんだ」

『何を?』

「ナワーブが君にとある衣装を見せたいって言ってたんだ。でも試合に行くからラルとどこか行くなら場所を教えてほしいって言われたからもう少ししたらその衣装を着てここに来るって事をね」

『どんな衣装なんですか?』

「ダクス大佐……だったかな。事情が折り重なって留め置きされていた物だから、1番に君に見せたくなったんじゃないかな」


たい、さ。

どうせあの頃の軍服なんて来てこないだろう。あくまでも彼の階級は大佐よりは少し下。
衣装に左右されてしまわないといいが。己の心も。


『なんか見物人増えましたね』

「一応防音とは聞いたけど少しは漏れてしまうのよ。銃声なんてもってのほかね」

『彼がここに来るの少し危なくないですか?支障が出たりとか』

「そうね……。温室から少し行った所としか伝えてないから心配ね」


場所の心配ではなく精神状態を心配してます。


「にしても、なかなか勝負がつかないわ!」

『ええほんとです。弾回収が後々面倒ですねこれは』


銃を胸の前で抱えながらマーサさんと談笑していれば背後が騒がしくなる。


「あ、来たわね。私が良いって言うまで後ろを向いちゃダメよ?」

「お前場所の伝え方下手すぎんだろ……。ってかここで何してたんだ?」

「彼女に少し練習相手になってもらってたの。見せる衣装はそれ?」

「ああ。演繹衣装ってな」


彼女がいいわよと言って僕を振り向かせた。
その瞬間、僕は口をつぐんだ。


『もし未だに憎悪の心がたぎっていたならば貴方をこの場で殺す事だって可能だったかもしれない』

「ラル?一体どうしたの?」

『射撃楽しかったです。また誘って頂けると嬉しいです。
……失礼します』


銃を彼女に渡して部屋から出ようとする僕の腕を掴む別の腕。


「お前に見せたくて着てきてやったのに。何も言わないで行くつもりかよ」

『離して下さい』

「俺的にもこの衣装はなんかなぁって思うんだ。
ちょっとあの頃を思い出させるってか?」

『離せと言ってるのが聞こえないのか?』


かけられた力が緩んだので手を振り払う。
その好意も今は苦痛の槍にしかならない。
貴方にとってのあの頃はいつ?
そしてどんな感情だったの?
どんな感情で銃器を構えて撃ったの?

唇をぎゅっと噛んでその場を後にする。


試合、行かなきゃ。
痛みで全て忘れてしまえばいい。



どのくらいの血を流したら今の貴方を視界から消せる?

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白狐-bilyakko-(プロフ) - リパ推しの雪さん» ありがとうございます!(*´`)更新頑張ります!! (2021年3月1日 9時) (レス) id: 6701540cff (このIDを非表示/違反報告)
リパ推しの雪 - すごい素敵な作品ですね!更新頑張ってください!応援してます! (2021年3月1日 5時) (レス) id: e92c1b8c9b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白狐ーbilyakkoー | 作成日時:2021年2月27日 1時

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