あの傭兵に妹がいたようで【第五人格】 (ページ37)

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［やだよぉ…お母さん…！死んじゃやだぁぁぁ！］

［俺は、なんも、悪く無いよな？］

［コネで入った軍人なんかの言う事が聞けるかよ！］

泣き叫ぶ子供。
青ざめた顔の兵。
銃口を此方に向けた味方。

皆、助けを少なからず求めていた。
口には出さずとも。

誰に教えられただろう。助けを求めるなと。それは恥だと。
弾が腕や足にめり込んでも、硝子片が顔を掠めても。

僕は言わなかった。

[助けてお願い]

死んだ味方が。敵が。罪のない人々が。

僕の足を掴んで引っ張る。

彼等は僕を恨んでいるに違いない。

[次は軍人にならないで。もう少し後の平和な世に産まれてきてね]

そんな願いはきっと届かなかったんだ。
無駄でしかなかった。たった1人の言葉なんて。

［苦しかったら泣きなさい。痛かったら泣きなさい。人間は涙無しには生きていけないのよ］

［助けて欲しい時も？］

［えぇ。貴方は人間でしょう？］

亡くなった母が言っていた。
負けず嫌いだった僕はよく涙を堪えていた。

じゃあ涙が枯れた僕はもう人間じゃないの？
泣き方も出し方も忘れたよ。

助けの求め方もね。

一生暗い闇の中で生きていくしかないの？

なんて声をかけたらいいの？

その後はどうやって会話したらいい？

私にやり方を教えて。

身に付けるハズだったもの。

皆が持ってるそれを私にも頂戴？

その為だったら何を賭けたっていい。

母の愛情を途中までしか受け取れなかった私に。

学校に行けなかった私に。

教養の殆どを軍で学んだ私に。

涙の出し方と助けの求め方を教えて下さい。

「………………！！…………！」

「……、……！？……！！」

誰かが私を呼んでる。

このまま私は目を開けていいの？

ねぇ、答えてよ。

教えてよ！

________ってば！