二十五 ページ25
.
「お客さーん」
男は少し驚いた顔でこちらを見た。
Aは俯いたままだ。
「困りますねえ。うちのスタッフに手を出されちゃあ」
わざとらしく指を鳴らし睨みつければ、男の黒目は不安そうに揺れた。
男の腕を力ずくで掴み、立ち上がらせる。
思った通り、男は抵抗し手を振り払った。
「何すんだ。憶測だけで犯人扱いされちゃあ、困るなあ」
汚らわしいものを見るように、銀時やその後ろに控える新八達もその視線を向けた。
彼らも男に怪訝そうな顔を浮かべている。
「憶測だあ？悪ぃけど、こっちは証拠撮ってんだわ」
そう言って、胸元から借りた端末を手に取る。
そして、そのスイッチを押し、
『駄目だなあ。飲み物くらい確認しなきゃ』
と男の怪しく話す声を大音量で再生する。
周りの客はざわっと動揺の声を上げる。
「これを世の中に流されちゃあ、まずいんじゃないの？
不正の証拠にしちゃあ、立派なもんだな」
それを聞き、男の顔が青ざめていく。
端末を奪おうと銀時に手を伸ばすが、新八達が彼を取り押さえた。
視界の端で、妙達が通報しているのが分かる。
この男が連行されるのはもうすぐだろう。
男の首根っこを掴み、にっこりと笑う。
「じゃ、余罪とお仲間さんも教えて貰おうかね。女を食いもんにするとは、情けねえ奴なこって」
銀時の言葉に、男の肩はがっくりと落ちていった。
もともとはネット上だけで威勢がよかった奴らの集まりだ。
直接詰められて、がたがたと身体を震わせている。
「Aチャン、大丈夫アルか…？」
真撰組が到着し、一気に店内は騒がしくなる。
男を彼らに引き渡している最中に、Aを放置してしまっていることに気が付いた。
(やっべ。捕まえることに必死だったな)
「A、大丈」
近づいて声をかけようとした時、目の前に妙が立ちはだかった。
神妙な顔で首を横に振る。
「んだよ。行かせろよ」
「今は駄目。せめてもう少し後にして」
「あいつがああなってるのに放っておけ」
「銀さんが今何と言おうと今は駄目なの」
早く土方さんのとこに行って、と妙は肩を強引に押した。
妙の肩口から、茫然としているAの姿が見える。
神楽の呼びかけにも、ただ頷いているだけで。
「また後でお願い。銀さんなら分かって」
妙は眉を下げ、悲しそうな顔でそう言った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 87人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Nattu(プロフ) - 慎さん» 慎さんん;;また来ていただいて嬉しいです;;同じ状況だ…萎えますよね;;慎さんの作品近々見に行きますね！^^いつも嬉しいお言葉ありがとうございます❤️🔥 (2022年7月15日 20時) (
レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
慎(プロフ) - ランキング入りおめでとう御座います👏私も最近溜めていたはずの話が知らない間に消えてて萎えました…😢お忙しいとは思いますが無理のない範囲での更新、頑張ってください。今作も大好きです😊🥀 (2022年7月15日 19時) (レス) @page7 id: 101fab3c19 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Nattu | 作成日時：2022年7月4日 22時
