十三 ページ13
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女は携帯の画面を警戒に叩く。
その顔はとても楽しそうで、丸い目は輝いていた。
「…あっ。すみません。夢中になってました。
気にしないでください。こっちで勝手に撮ってますので」
「気にしないほうが無理だっつの、馬鹿」
そう言うと、舌を出した。
(あー…ほんと、無理なんだけど)
夜だというのにまだ暑さは残っている。
地面から沸き上がる熱気は、さらにこの場を奇妙な雰囲気を漂わせる。
女はいつもの仮面をつけて、
「そんじゃあ、行きましょうか」
当たり前のようにそのまま墓場に向かっていく。
片手には、彼女の相棒の携帯電話がある。
怖いもの知らずの彼女の後ろをゆっくりとついていく。
Aはずんずんと前へと進んでいく。
周りを見る余裕もなく、小さな背中を追うのに精一杯だ。
不意に無機質な仮面がこちらを向く。
ぼんやりとした光の中にそれが現れて、思わず悲鳴を上げた。
「もう。何びびってんですか」
一回りも違うであろう女は呆れた声でいう。
ずかずかと近づいてきて、顔を覗き込む。
表情もない仮面が近づいて、また声をあげそうになった。
「ったく…手でもつないだらいいですか」
溜息をつきながら、白い手を差し出してきた。
弱みを知られてから、この女はどうも子供扱いしてくるばかりだ。
しかし、それに言い返せるほどに心に余裕はなくて。
「べ、別に怖くねえし。お前がどうしてもってんなら」
「はいはい。もう先に進みたいから行きますよ」
勢いよく手を捕まえられて、また前へと進む。
ついこないだ知り合ったばかりというのに、随分と態度が大きい女だ。
「ん…?」
「お、おい。どうしたんだよ急「しっ。静かに」
口を掌で塞がれて、墓石の後ろに身を隠す。
隙間から見えたのは、黒い影が数個。
供え物を漁るような音がするだけで、何かは分からない。
不意にきゅっと繋がれた手の力が強くなる。
Aを見ると、
『木刀の準備、お願いできますか』
と口をぱくぱくさせて。
空いた手で腰元の相棒に触れる。
二人顔を見合わせて頷く。
足音を立てないように摺り足で近づき、
「「墓荒らし、捕まえた!!!」」
それぞれの相棒をその影に向けた。
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Nattu(プロフ) - 慎さん» 慎さんん;;また来ていただいて嬉しいです;;同じ状況だ…萎えますよね;;慎さんの作品近々見に行きますね!^^いつも嬉しいお言葉ありがとうございます❤️🔥 (2022年7月15日 20時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
慎(プロフ) - ランキング入りおめでとう御座います👏私も最近溜めていたはずの話が知らない間に消えてて萎えました…😢お忙しいとは思いますが無理のない範囲での更新、頑張ってください。今作も大好きです😊🥀 (2022年7月15日 19時) (レス) @page7 id: 101fab3c19 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年7月4日 22時