十弐 ページ12
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うだるような暑さだった。
いつもなら冷房の効いたファミレスで働いているはずが、今日は珍しく外出していた。
日々家でパソコンとにらめっこするAの肌は青白いといってもいいくらいだ。
「ん。欲しい」
「はい?自分で買ってくださいよ」
「熱中症なったら困るだろ。ほら」
銀時はアイスクリームを掴んで突き出す。
ひんやりとした空気がAを誘っている。
思わず喉が鳴った。
「あーもー分かりましたよっ」
奪うようにして受け取り、レジへ持っていく。
Aが会計するのを見計らって、
「あざーす」
彼は勝手にそれを取っていく。
止めるより先に封は切られていた。
溜息をつきながら近づき、余ったほうの封を切る。
少し間を開けて隣に座る。
銀時は美味そうに咥えていた。
店の軒先についた風鈴の音が心地よい。
ぬるい風が頬を撫でて、もう夜が来ようとしていることに気が付いた。
「新八達から連絡来たか?」
そう言われ携帯電話を開くも、何も通知はない。
どうやらこちらと同じような状況のようだ。
墓荒らしに合う墓場は多く、二手に分かれて行動していた。
どちらが当たりを引くのか、はたまた二つとも外れるのか。
手ごたえのない調査ばかりで、ただ暑さに飲まれているだけの気さえしてきた。
「なあ。もう帰ろうぜ」
「何言ってんですか。今からじゃないですか」
「こんなに街の奴らに聞いても何も出ねえんだ。ここは外れってことじゃねえの」
そう言ってアイスを食べ終わる。
立ち上がりどこかへ行こうとする彼の裾を掴み、きっと睨んだ。
「やれやれ。俺は外れくじ引いたな」
「誰が外れくじですって?」
急いで食べ終わり、立ち上がる。
嫌そうな顔をしている男を引きずり、目的地に足を向ける。
不意に手を掴まれ、身動きがとれずにいると、
「当たりを見逃してんじゃねえよ」
アイスの棒が手から抜かれていた。
彼はそれを構わず咥えて、
「じゃあ、自称当たりくじの姉ちゃん、
公開処刑にされた、いい大人を案内してもらえますかねえ」
怖い顔をして言い、
(あ、この前の配信、根に持ってんな)
棒をぎりぎりと噛んだ。
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Nattu(プロフ) - 慎さん» 慎さんん;;また来ていただいて嬉しいです;;同じ状況だ…萎えますよね;;慎さんの作品近々見に行きますね!^^いつも嬉しいお言葉ありがとうございます❤️🔥 (2022年7月15日 20時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
慎(プロフ) - ランキング入りおめでとう御座います👏私も最近溜めていたはずの話が知らない間に消えてて萎えました…😢お忙しいとは思いますが無理のない範囲での更新、頑張ってください。今作も大好きです😊🥀 (2022年7月15日 19時) (レス) @page7 id: 101fab3c19 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年7月4日 22時