好き ページ10
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「...急に泣いたりしてごめん」
月曜日ということもあり、早めにお開きになった
「いや、全然大丈夫だけど、なんかあったのか?」
なんか、ね
お前だよ、北山
北山のせいだよ
「...北山はさ、俺の事少しでも好きだった?」
あの時と同じように
足を止めて少し大きめの声で
ずっと聞きたかったことを口にした
「大好きだったよ」
驚きで見開いた瞳もすぐに柔らかく
真っ直ぐに俺を捉えられ
なんだか悔しくなって
「俺は今でも大好きだよ」
涙で歪む視界に北山を捉えると
申し訳なさそうに俯いた
「...ごめん、」
「謝んなよ、虚しくなるだけだわ。
じゃ、恋人とお幸せに。おやすみ」
俯いたまま動かない北山を追い越し
早歩きで駅に向かった
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「ははっ...あほらし、」
北山の柔らかい視線が脳裏にこびりついて離れない
聞かなきゃよかった、
いや
聞けてよかった
いや、聞かなきゃよかった
「あー...っくそ..わかんねぇよ」
「ガヤ?」
「...!タマ...」
声をかけられ、振り向くと
仕事終わりのタマがいた
「なーにしてるの?」
「別に、飯食った帰りだよ」
「ふーん..?」
そう言って俺の顔を覗き込むタマ
「...なんだよー」
「いや、さっきすごい顔してたからさ〜」
「...北山くんとなにかあったのかなって」
「っ...べつに、」
別に、なにもない
そう言いたいのに、言葉が出てこない
「ガヤは、北山くんのどこが好きなの?」
「..どこ、か..」
そんなの、
全部だよ
顔も
仕草も
声も
ぜんぶ
ぜんぶ
「...全部だよ」
「あーあ、北山くんが羨ましいわ」
「は?どういう..」
「だって勝手に振っていなくなって、また現れてさ」
「なのに、ガヤにこんな愛されて」
「..いつまでも忘れられない俺が悪いんだよ」
「ねぇ、ガヤ」
「ん?」
ふとタマのほうに視線を送ると
ぱちりと視線が交わった
「..俺と付き合ってよ」
「は!?」
「俺言ったよね?本気でガヤのこと想ってるって」
「でもそれって、好きとは」
「好きだよ」
「俺、ガヤのこと本気で好きなの
...2番目でもいいから」
そう真っ直ぐ俺を見つめるタマ
「2番目だなんて、そんな」
「ガヤが傷ついてるの嫌だよ、辛い顔見たくない」
「でも..でも、」
俺なんかでいいの?
過去の恋人を忘れられない女々しい奴だよ?
「俺と一緒に前に進もう」
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作者名:ぴょんすけ | 作成日時:2023年7月29日 1時