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未練 ページ5

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土曜日。



ついに北山とご飯に行く日がきた


連れていきたい店がある、って北山が言うから

その店の最寄り駅で待ち合わせすることになった


「さむっ...」


カイロでも持ってこればよかったな...


「ふじがや、おまたせ」


寒さで肩を竦めていると

後ろからひょっこりと現れた



長めのロングコートにインソールのスニーカー
ラフだけど洒落た格好をした北山に
不覚にも見惚れていると


「藤ヶ谷?」


顔を覗き込まれた



あ...左耳、まだピアスしてる


校則を無視して左耳だけ開けた北山は、
よくお揃いのピアスをくれた

でも俺は開けていないからネックレスに通して大切に保管してたっけ


「腹減ったなー、早く飯行こうぜ!」



──



北山のオススメで行きつけの焼肉屋にきた


「ここ安いのにすげえ美味いんだ、」

「へえ〜すごいね」


...


会話が続かない


12年も会っていなかったんだ、

普通は話したいことが沢山あるはずなのに


言葉が出てこない





「藤ヶ谷、いまなにしてんの?」


長い沈黙を破ったのは北山


「あー...不動産屋で働いてる」

「まじ?すげえな」

「...北山は?」

「俺はー...証券会社で働いてる」

「バリバリだね、」

「んなことねえよ、普通」


それからは所謂、世間話をした


渉の店の話とか、仕事の話とか


「藤ヶ谷が元気で良かった」



なに、それ...


唐突に言われたその言葉に


またあの言葉が脳内でリフレインした






「北山はさ、」




少しでも俺の事好きだった、?

そう聞こうとしたとき、



北山のスマホが鳴った



「出ないの?」

「わり、出てくる」



席を立ち少し離れたところで電話をしてる北山


何を話してるのかは全然聞こえなかった

なのに、

「おやすみ」

どこか甘く、安心したような声色だけが
聞こえてきて、



あ、恋人いるんだなって、

察した



「わりいな、」

「んーん、早く帰らなくて大丈夫?」

「大丈夫大丈夫、で さっきなんか言おうとしてたよな?」

「あー...大したことないから」








「気を付けて帰れよ」

「うん、今日はありがと」




結局、蹴りをつけられなかった



聞きたいことも聞けず、モヤモヤしたまま解散してしまった


ただ恋人がいるのだけはわかった



「はあ...」


俺は、

まだ新しい恋に進めずにいるのに...




大きく吐き出した息は白く空へ舞っていった




──

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作者名:ぴょんすけ | 作成日時:2023年7月29日 1時

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