勝手 ページ15
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「今日はごめんな、じゃあな」
ふらふらしている大倉くんを介抱しながら
タクシーで帰っていった北山
「...なんか北山くん機嫌悪かったね」
「うん..なんか変な空気だったな」
「帰ろっか、ガヤ」
お酒のせいで熱くなったタマの手が触れる
「ばか、おい」
「いーじゃん、夜だし」
ほんの少し握り返すと、
ぎゅっと強く指が絡まる
「好きだよ、ガヤ」
少し冷えた空の下
澄んだタマの声が響く
「..おれも」
なんて在り来りな言葉しか出てこなかった
やっぱりまだ
心の中に
北山がいる
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休日
今日はタマが友達と釣りに行っている
俺は釣りに興味がないから、着いていかない
今日はなにしようかな
なんてベッドの上でぼーっと考えていると
prrrr...
「誰だ?」
画面に写る文字は
' 北山 '
電話なんて珍しい
なんの用事だよ
「..はい」
「久しぶり」
「..なに?」
「いや、また連絡してもいいって許可くれたじゃん?」
「そんなこと言ったっけ」
あれから1ヶ月以上経っている
全然連絡がないから、忘れてるか
嘘だったのかって思ってた
「ちょっと相談したいことあるんだけど、会えない?」
「電話じゃダメなのかよ」
「会いたいんだよね」
「なにそれ」
「藤ヶ谷に会いたい」
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どうしてこうも、
俺は北山に弱いんだろう
「おまたせ」
「遅い..」
結局カフェでお茶することになった
「うわ、オシャレ〜」
「ここコーヒーも美味しいよ」
「藤ヶ谷やっぱりこういうの見つけるのうまいんだな」
「北山はどっちかっていったら、ご飯屋だもんね」
「カフェなんて1人じゃ来ないしな」
「たしかに、似合わないかも」
北山が1人でカフェに居るのを想像したら
なんだか変で
「ふっ..ふふ」
自然と笑ってしまった
「やっと笑ってるとこ見たかも」
「..別に、笑わないわけじゃないし」
「..で、相談ってなに?」
「あー、えっと...」
「もしかして相談あるって嘘?」
「ちがう!ほんとに、ほんとに相談があるんだよ」
ふぅ、と息を整える北山
「実は、大倉と別れたんだ」
え?
「はい?」
「だから、大倉と別れたんだよ」
「なんで?...てかこれ相談じゃなくて報告じゃん」
「本題はここからなんだよ」
「藤ヶ谷、」
「俺、またお前に恋したみたいなんだ」
「好きになってもいいか?」
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作者名:ぴょんすけ | 作成日時:2023年7月29日 1時