薄桜鬼 涙は伸ばした手をすり抜けて〜貴方に触れたくて〜

第15話:音色 ページ16

爪弾いた琴の音色が響いた。
緩やかに…そして…

あぁ…大好きな音色…
私の生き甲斐だ。

A)…この音は水色…

雫を思わせる優しい音…
その音は随分と懐かしい自分の音色だった…

ただただ、ひたすらにその音に身を任せた…


千鶴)Aさん…？目が覚めましたか…？

A)…あら…

千鶴)随分とゆっくり寝てましたね…

私としたことが。
此処で寝てしまっていたらしい。

A)…失態だな。

千鶴)Aさんが眠っているのを邪魔してはいけないかと思って…

A)別に…他の人たちは？

千鶴)来ていません。

A)そっか…

久しぶりの夢だった。
それほど私は恋しいのか…

A)はぁ…

千鶴)Aさんはいつか此処を出るつもりですよね…

A)そうだよ？私が呑気にずっと此処にいると思う？

千鶴)私も最初はそう思ってましたから…

A)だろうね。人斬り集団として名の高いこの場所にいたいと思ってるほうがおかしいんだよ。

私は私の場所に戻りたいだけなんだ。

千鶴)…絶対にわかります…いつか…

この場所にいたいって気持ちが？
そんなの馬鹿げてる。

A)…私は早く戻りたいんだよ…

今は何もないけど、私が生まれたあの場所に…
静かな私の居場所…

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