ページ ページ10
.
そんな中何処も支配せず、知識は得られるものの経験の得られない彼は、精神年齢で言えばまだまだ小学校低学年ほどだろうか。時々見せる魔王の表情は、所謂本能と言うものだ。
普段はあまり精神年齢の低さをあまり感じないのは、Aの教育の賜物と言える。もちろんAからすれば様々なことを経験してもらいたいのだが。
「離してくれそうにないですね」
そう、とても小さく呟いたあと、自身の服を掴むらっだぁの手を少しばかり優しく撫でる。その時の瞳は、とても大切な人を見守るような、柔く優しくも儚い瞳をしていた。
そのままの状態で時は流れていき、らっだぁが目が覚める頃には空はどっぷりと紺色に浸かっていた。
「ん、ぁ……A……?」
「私は此処に居ますよ、魔王様」
ぱち、と目を覚ましたは良いものの直ぐに瞼を下ろしてしまい、らっだぁは手探りでAのことを探し始めた。Aはその手を取って上半身を起こさせた。
らっだぁは手を離した後、好きなだけ寝ていたからなのか、眠気は無さそうに欠伸をした。そして起きたばかりで少しぼやける視界で必死にAを探す。そしてその視界の中にAを捉えると、らっだぁはへらりと笑った。
「……A、おはよぉ」
そんな気の抜けた挨拶に、Aも思わず柔らかな笑顔で返した。
「おはようございます、魔王様」
すると、普段表情を崩さないAがとても優しい顔で笑ったからなのか、らっだぁはさらに蕩けたような笑顔になる。いつもは魔王様、と呼ぶと呼び捨てしろとうるさいのに、それすら言わなかった。
いつの間にかいつもの表情に戻っていたAに、らっだぁは上機嫌で抱きつく。
「ほら朝ごはん食べよ! 食堂まで連れてって〜!」
このまま連れてけ、と言うらっだぁを、Aは運びやすい体制に抱え直す。すると、らっだぁはきゃっきゃと小さな子供のように、無邪気にはしゃいだ。くふくふと嬉しそうに楽しそうに笑うらっだぁを横目に、Aは口を開いた。
「もう夜なんで、晩御飯ですけどね」
「えっ」
55人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アイリス - 初コメ失礼します〜。お話がとても面白いです!体調に気を付けつつ頑張って下さい!(上から目線だったらすいません) (2020年4月10日 23時) (レス) id: efae12fbca (このIDを非表示/違反報告)
らんら - コメ失礼します!好きです。(唐突)作者さんと自分の好み同じすぎます!更新頑張って下さい! (2020年4月8日 7時) (レス) id: 411096a00b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ