【d!】リンカーン白書！【2】

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「あ、身バレ防止？使ってないマスクもあんで」

「…ありがとう」

ロボロくんから受け取ったマスクもつけるともう、変質者じみた女スタッフの出来上がりだ


チーノくんの提案で、少し離れたところを歩くことに
とはいえ駐車場の出入り口のような裏口は端と言えど他人を装うにはギリギリの距離感だ

割と平然に出待ちの存在を受け入れた彼に聞けば、このイベントに限らず割とよくあることらしい
一方私と同じく初経験のロボロくんはその隣で若干ソワソワし始めていた

「じゃ、そのまま解散でええか！」

チーノくんはいつもの調子で話を終わらせ、堂々と歩いていった

＿＿＿＿＿＿



2人の登場によって発された黄色い声が、コンクリートに反響して転がる

その空間の端を鞄を庇うようにしてそそくさと1人歩いていく、こんなに肩身が狭い気がするのは久しぶりだ

先にゆっくりと歩き出した彼らを追い越すときに、人混み越しにチーノくんと目が合う
彼は悠然とした態度で、頭一個分以上違う高さから目があったままゆっくりと目を三日月状に細めたような気がした

視線が絡まった瞬間からキュ、と上がった口角から体躯と見合わぬ小動物のようなかわいさが滲んでいる


ふふん、と声がつきそうなくらいの軽やかさで笑われ、そのままアイコンタクトを外された


ロボロくんの方も気になったが、ヒールやらで粧し込んだ女の子たちと丁度同じくらいの頭の位置になってしまって全く様子が伺えず、すごすごとその場を去ることに



歓声を背中で感じる程度の距離がとれ、肩を撫で下ろしながら左折した瞬間、人がいてびっくりした

「あっ、すいません」
「…こちらこそ」


さっきの出待ちの子達の、友人であろう人たち

彼女らとは打って変わって暇そうに携帯を弄っている
たしかに…駅の方に行くには右折が正解なので、ここは合流場所に最適ではあった


こっちにいるとさっきの子達が来ちゃうのか、


そう判断し早足でその道を抜けると後ろから声が


「あのメガネやばくない？」



それは私も……最初に思った

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