運命のヒト【さとみ】

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その日は疲れたAさんを帰した。

きっと駅に到着するまでは
泣くの我慢してたんだろうな。

さすがに家までついていくのはまずいから
Aさんの降りる駅でバイバイした。

……不安やな。


数日後、Aさんから連絡が来た。

Aお話したいことがあるんです!バーで待ち合わせできるかな??

二回目のデートのお誘いか。

俺はバクバクと落ち着かない胸元を押さえる。

落ち着かせてから返信する。

さとみ大丈夫だよ。今夜会おう

自分で送った文字を見てから
心臓がぎゅっと緊張する。

"今夜会おう"って、なんか、やばくないか。

夜遊び相手かなんかへの連絡じゃねぇかこれ。

さとみ「……」

無意識に口角が上がっている。

"今夜会おう"って、ねえ。

そうなるやんね。

既読がついた。

しばらくしてからスタンプが送られてくる。

この空白だった時間は
俺の言葉がAさんを動揺させていた時間…

…ってわけないか。

自惚れるのはやめよう。


俺はまだ、このポジションがどれだけ辛いのか
わかってなかった。

会える回数が増える上に、
好きな人の恋愛事情に踏み込めるんだって…

あわよくばころっと自分の女(もの)に
できるんじゃないかって…

そんな甘い考えをしていたんだ。


でも、実際はそんなに甘くなかった。

会うたびに好きな人が嬉しそうな顔で
俺に恋愛状況を報告するんだ。

A「かわいい、って言われた…///」

A「今度お食事に誘われたの…」

毎回毎回、
かわいい顔して、頬を火照らせて、

本当に幸せそうに言うんだ。

A「来週このバーで会うことになったの…！」

そしてついに、
俺らが毎回待ち合わせ場所にしていたこのバーも

あの男とAさんの待ち合わせ場所になりかけている。

いや、元はAさんと彼がよく来ていたんだっけ。

……Aさんと彼は上手く進んでいるようだった。

A「さとみくん」

酔った時にだけ、この呼び方をする。

さとみ「…Aちゃんて呼んでいい？」

俺は焦っていた。

こちらも距離を詰めないと。置いて行かれる。

A「……うん」

きっと酔いが覚めた翌朝には忘れているんだろう。

さとみ「…Aちゃん、Aちゃん…」

きっといつかあの男の女(もの)になるんだ。

だから今のうちに何度でも呼ぼう。

さとみ「…A」

君のことが、好きだよ。

￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
自爆

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