運命のヒト【さとみ】

＊ ページ13

さとみ「……」
A「……」

店員さんが空になった俺のグラスを見て
おかわりを尋ねる。

さとみ「あ…同じのを」

頼んじゃった。

A「……酔ってきた…」
さとみ「……」

確かにほんのり顔赤い。

さとみ「んー…」

やばいなこれは。

自分が酔った時のことばっか考えてたけど
酔われるのも結構やばい。

A「さとみさんは？大丈夫？」
さとみ「ああ、俺は…うん、まだ大丈夫」

こういう時でも周りの心配できるのって良いな。

大丈夫、とは言ったけど
空腹で飲んじゃったから…

やっぱり酒回るなぁ。

A「おつまみ頼む？」
さとみ「そうしようか」

目聡く察して聞いてくる。

すげぇわまじ。

A「…おかわりしようかな」
さとみ「え、やめときなよ」
A「無くなっちゃったし…」

空のグラスを左右に振るAさん。

さとみ「酔うなよ？w」

なんて言いながら、

酔ってくれたらナニかできるかも知れないと
期待している。

A「…うーん」

首を傾けて悩むAさん。

ぐいいいいっと傾けて俺の肩にぽすっと乗せる。

さとみ「……」

俺は動揺しているのを必死で隠す。

優しい香りが近い。

A「どうしたらいいと思う？さとみくん」

あ、呼び方変わった。

距離が一つ縮んだ感じがする。

いや、一つ以上縮んだのでは。

さとみ「酔われたら…俺何するかわかんないよ？」
A「……私はさとみくんを信じてるよ」

だからさぁ、

この女は俺の何を見て信用できると思ってるんだろう。

職業も怪しいし急に声かけてくるし

俺ただの不審者だろ。

A「たーのもっと！店員さん！」

肩にあった頭を元に戻して
注文をしている。

俺はほちほちおつまみを食べながら
頭の中を冷静に戻す。

…信じてる、って言われたら何もできねぇよ。

やっぱ賢い女だなぁ、ずりぃなぁ。

このまま俺は
Aさんの誘惑に耐え続けないと行けないらしい。

A「……」

二杯目は違うカクテルらしい。

白くてほんのり透き通ってて、

なんかえろいお酒。

A「あ、また見てる」
さとみ「なんて名前？そのお酒」
A「何でしたっけ」

ホワイトレディー、だってさ。

なんでここで俺の理性を煽ってくるようなお酒頼むんだよ。

ひどい女だ。

A「お手洗い行ってきますね」

席を立つ彼女。

すらりと綺麗な脚が露わになる。

俺はふいっと目を逸らした。

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