酸いも甘いも噛み締めて【沖田総悟】

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『土方さん、書類持ってきました』

「入れ」



「失礼します」と襖を開ければ、一番に鼻をついたのはコーヒーの苦々しい香りだった。

書類に視線を落とす土方さんの片手に備えられた白いカップ。それがこの香りの根源のようだ。


タバコとコーヒー。２つの香りが混ざって、何やらおかしなものになっている気がするが、……彼も疲れているのだろう。

机の上の灰皿には溢れんばかりのタバコの吸い殻が散乱していた。きっとストレスが溜まっているに違いない。



「……どうした。書類寄越せ」

『…っあ、はい』



低い声に思わず肩を揺らした。
明らかに不機嫌そうな土方さんは、眉間のシワを隠す事なく私を睨みつける。―――けれど、その顔からは疲れも垣間見えた。


長い間、資料を読んでいたのか。
それとも彼の近くに置かれた携帯が原因なのか。


よくよく見れば、彼の行動は忙しなく、時折携帯を見ている。書類を読んではいるが、意識は携帯に向いているようだ。



―――誰かからの連絡が来なくて、苛立っている…とか。



「A、もう下がっていいぞ」

『土方さん』

「まだ何かあんのか」

『―――不祥事でも起きましたか？』



思い切って投げかけてみたそれに、土方さんは小さく目を見開く。

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