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はぁ、と吐き出した息は、白く染まり上空彼方に消えていく。
それを静かに見守ってから、冷えた手を擦り合わせて息を吹きかけた。
今日は見廻りの日。
空を見上げると灰色の冬空が広がっていて、本格的に江戸の街にも冬が訪れたのだと痛感させられる。
……私が、真選組に来てからもうすぐ2ヶ月経つのだ。早いのか、遅いのか……よく分からない。
―――少なくとも、私が彼処に居ることに対して心地良さを感じているのは、否定せずともその通りなんだと思う。
当初は馴れ合うつもりなんてなくて。
形だけの結婚ならば私が総悟さんの“嫁”として気取る必要も、気を遣う必要も無いのだと思っていたけれど。
気さくに、笑顔で話しかけてくれる隊士達は、色々な事を嫌な顔せず教えてくれて。―――いつの間にか、見廻り組に居た時よりもずっと、此所が好きになっていた。
ここに想い入れなんて残すつもりは無かったんだけど。
…やっぱり、人というのは傲慢で、臆病だから。
どうしても、独りで居ることが酷く虚しく、悲しく感じるんだ。
(……あーぁ、どうしようかな)
あれだけ、異三郎様に“ただの任務だ”と。出発前に言われていたのに。
私達の任務は主に、犯罪を犯した者の処罰及び攘夷浪士の駆逐だ。言ってしまえば、血で血を洗うような、そんな仕事。
そこにいちいち私情やら感情なんかを持ち出してしまえば、そのうち私達の精神は崩壊し、働く事も、生きる事もままならない程落ちぶれてしまうだろう。
人間は強くない。人を斬る度に罪悪感、哀傷に浸っていてはそうなるのも目に見えている。
だから、私達は任務に対して何も感じてはいけない。
淡々と、やれと言われたことをやるだけの、カラクリのように。
――――それなのに、
(……―――愛なんか芽生えてしまったら、どうしてもやるせない)
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アルハ*平日低浮上*(プロフ) - しろさん» コメントありがとうございます!わぁぁ、そんな風に言ってくださると、本当に嬉しいです!更新頑張ります! (2017年9月4日 23時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - こんにちは!沖田さんの小説の中でもこの作品大好きです。これからも応援してます!! (2017年9月3日 22時) (レス) id: a9aae77c99 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ*平日低浮上*(プロフ) - ちゃむさん» わぁぁ、とても嬉しおコメントありがとうございます!1番のお気に入りだなんて言ってもらえて私は幸せです泣。これからまた恋愛要素入れていくので楽しみになさっててください!^^*頑張ります! (2017年8月25日 23時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃむ(プロフ) - 初めまして。今この小説が1番お気に入りでして更新を毎回楽しみにしてます。とてもキュンキュンしながら楽しんでます!有難うございます!更新頑張って下さい^ - ^ (2017年8月20日 8時) (レス) id: 595d5740d4 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ*平日低浮上*(プロフ) - 獅子の子さん» す、素敵な小説だなんて・・・!ありがとうございます!はい、カップルの方でもコメント頂いて歓喜極まっています笑これからもこの小説を楽しんでもらえたら嬉しいです^^* (2017年8月11日 14時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アルハ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/bfd3c0329e2/
作成日時:2017年8月2日 22時