九十九話 やりたいこと ページ49
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一人の警察官が憤った表情を隠しもせず報告する。
「何処にも爆発騒動なんて無いそうです。通報は悪戯ですね!全く!」
そんな部下を窘めるでもなく、警察官は一つ頷いた。
「そうか。……悪戯で何よりだ」
その様子を見ながら、鏡花が口を開く。
「偽の通報で市警を呼んでおいた。警察と一緒なら組合も気軽に手出し出来ない。来て」
そう云って身を翻し、二人を先導する鏡花。
『__泉さんは隠れて、私が連れていく』
「良い。」
その会話に敦は割ってはいる。
「鏡花ちゃん、如何して戻ってきたんだい?行方不明の儘でいれば戦争に巻き込まれずに済んだのに」
頭を巡る紅葉の言葉を振り払い、傷口を押さえながら鏡花に訊ねる敦。
鏡花は彼に背を向けた儘で答える。
「私の居場所は、探偵社だけだから」
闇の中を歩いてきた少女は、光の下で足掻く青年の方を振り返った。
静かに、口を開き、言葉を紡ぐ。
「生まれて初めて成りたいものが出来た。だから戦う」
『___そっか、』
Aはただそう呟いて、彼女の決断を見守ることにした。
私がしたいことを、彼女もまたしようとしている
それなら、私は見守ってあげるだけ。
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作者名:舞。 | 作成日時:2019年10月31日 21時