この物騒な世界に幸せを！二【文スト】 (ページ48)

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九十八話彼女の居場所はページ48

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敦と鏡花とAは港に在る倉庫の陰に身を潜めていた。

鏡花は辺りの様子を窺っている。

｢くっ……｣

荒い息を繰り返していた敦が、其の場に崩れ落ちた。

鏡花が振り返り、屈み込む。

じわりと血が滲む腹部を見て、心配そうに手を伸ばすが敦は安心させるように笑った。

｢大丈夫……根性骨(タフネス)が人虎の売りだ｣

二人は鏡花を真っ直ぐ見つめる
その姿を見るのは、ポートマフィアからの襲撃を受けた後失踪して以来だ。

『＿＿心配しました。泉さん。何方に行っていたんですか』

鏡花はその問いに俯き、ゆっくりと口を開いた。

｢闇を、彷徨っていた……裏路地や、貧民街や……嘗て私の居た場所を｣

鏡花の脳裏に、過去自分が過ごしていた場所が次々と過ぎる。

｢でも、其処はもう、私の居場所じゃなかった｣

そのどれもに、既に彼女が居た痕跡など跡形もなかった。

鏡花が一瞬目を伏せる。

そして、敦に声を掛けさせる暇も与えず再び港に視線を遣った。

｢それより先ずは組合の対処。あれ｣

鏡花が指差す先に、一台のパトカーが駐まっている。

そしてその傍らには、警察官が立っていた。

『＿＿もしかして、嘘の通報したの？』

ポカンとした顔でAが問うと、鏡花は頷いた

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