九十七話 現れたのは ページ47
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木製の橋が軋む音が響く。
フィッツジェラルドは敦から視線を外し、そちらを見遣る。
髪を掴まれたままの敦も視線を向け、虚ろだった目を大きく見開いた。
そこに立っていたのは、赤い着物の少女＿＿＿＿鏡花。
彼女は真っ直ぐに三人の方を見据えている。
『泉さん！』
フィッツジェラルドがパチンと指を鳴らした。
髪を放された敦の体が四角いタイルの上に倒れる。
「おや、君は確かマフィアの下級構成員だな。報告書では行方不明とあったが？」
「違う」
鏡花はスタスタとフィッツジェラルドの方へ近付く。
視線は一切ずらされず、フィッツジェラルドに向けられている。
「私の名は鏡花、探偵社員」
フィッツジェラルドから6mほど離れた場所で、足を止める。
「宜しく」
そう云った次の瞬間。
彼女は地面を強く蹴り、フィッツジェラルドに短刀を突き付けた。
彼の首に、赤い筋が引かれる。
「なっ………」
フィッツジェラルドは飛び退き、鏡花から距離を取る。
鏡花は無表情に短刀を構え直した。
「何という野蛮な国だ。こんな少女が刃の届く瞬間まで殺気もないとは……」
冷や汗混じりに云うフィッツジェラルド。
そして、鏡花は彼に背を向けた。
倒れている敦の腕とAの手を掴み、走る。
橋の欄干に足を掛け、二人を連れて身を投げた。
鈍い着地音がし、フィッツジェラルドは目を瞬かせた。
三人は、丁度橋の下を通った船の上に居た。
「おや、逃げられたか」
さして驚きもしないように云うと、フィッツジェラルドは組合の作戦参謀である女性、オルコットから受け取った手帳を開いた。
「さて、この場合の対応は……」
そこには、大きくこう印されていた
��
無言でパラパラと頁を捲る。
全ての頁、その文字が書かれているだけだった
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作者名：舞。 | 作成日時：2019年10月31日 21時
