六十三話 あなたがしたいこと ページ15
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「同棲なんて聞いてませんよ!」
探偵社に、少年の声が響いた
「部屋が足りなくてねぇ」
太宰はヘラヘラとしている。
『ど、どうしたんですか』
マフィアに囚われた件の報告書を纏めていたのだが、その声に問わずはいられなかった
『____あれ、貴方は?』
見慣れない顔が居た。
紺色の綺麗な髪に、
赤色の着物を着た少女だった
「あっえっとこの子は___」
敦が何かを言おうとする前に、少女が声を上げた
「泉鏡花 好きな物は兎と豆府。嫌いな物は犬と雷」
彼女の頭の中には、史実の泉鏡花が浮かぶ__が、こちらも女性になっている。
″尾崎一門は全員女性になっているのか__?″
と考えていると、衝撃的な言葉を彼女は云った
「マフィアで″三十五人殺した″」
「っあ」
敦は慌てる。彼女が、この事実をどう受け止めるのかが不安だった
「___一番最後に殺したのは三人家族。父親と母親と男の子。私の異能力″夜叉白雪″が首を掻き切った」
私よりも歳下の彼女が、三十五人もの人を葬った
泉鏡花に、夜叉白雪という本はない。
″夜叉ヶ池″という著書ならあった。
たしかあの本には、龍神・白雪姫がいたはず。きっとそれだ
『____異能力の、発動条件は』
「___夜叉白雪は電話からの声にしか従わない。」
辺りには沈黙が流れる
『__そうですか。分かりました。よく言ってくれましたね』
「_へ」
『よろしくお願いします。泉さん』
彼女の前でしゃがみ、頭を撫でる。
敦はほっとしたのか、安堵していた。
『同棲なら、私と一緒にしませんか?中島さんと交代したいです』
「えっちょっとまって僕が太宰さんと?!」
「嫌だ!!!私はAちゃんと一緒がいい!!」
ワーワー叫ぶ二人を横目に、Aは鏡花に云う
『自分がしたいことをすればいいと思います。』
『″人は新しく生きるために、たえず告別せねばならない。すべての古き親しき知己から、環境から、思想から、習慣から。″』
私の大切な人の言葉です。そういって彼女は悲しそうに笑った
″あなたは、わたしとおなじ″
彼女の目には、鏡花と自分が重ねて見えていた。
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作者名:舞。 | 作成日時:2019年10月31日 21時