7:花言葉 ページ7
「バルト、ただいま」
御見舞の花を今の花と取り替え、バルトの隣に置いてある椅子に腰をかける。
今日の花は、『ブルーデイジー』だ。
前にバルトが好きだと言っていた青い花。
なぜこれがいいのか聞くと、「ヴァルキリーの青だから!」と言って無邪気に笑っていたのを思い出す。
バルトはそういう理由で選んでいたようだが、神様の優しさなのか、実は『ブルーデイジー』の花言葉は【かわいいあなた】【幸福】【無邪気】という意味なのだ。
バルトにぴったりだが、選んだ本人はきっと何も知らないだろう。
教えてあげられたらよかったのに...
もう手遅れだ。
「あっ、そうだ...」
鞄の中から図書館で借りてきた桜色の本を出し、栞をしていたページを開く。
栞の柄は審判と言うタロットで、いつからか持っていたものだ。
この時のためにあったのかと思ったりする。
でも本当は、適当にとった本がこれで、読むなら読んでしまおうと借りたものだった。
「......」
あと少し読み終わる。
「...バルトは活字とか苦手だから、興味無いよな」
「........」
「......」
静寂。
近くの桜の木に止まっている小鳥のさえずりが少し聞こえた。
三月になれば、桜は満開になるだろう。
お花見、行きたかったな。
「...じゃあな、バルト」
帰る時間になったので、病院から早足でデパートにより、ナポリタンの材料を買って帰る。
「ただいま」
誰もいない家。
もう、あの陽気な「おかえり」は聞けない。
あの日々が恋しい。
淋しい。
あの幸せな毎日に帰りたい。
「...よし」
気を取り直して、少し意気込みながらエプロンをつける。
自分専用のフライパンやら調理道具を用意して、ナポリタンを作ることにした。
いつもの手順通り、完璧だったはずなのに。
「あっ...」
少しやらかしてしまった。
つい癖でバルトの分まで作ってしまったのだ。
あの笑顔が一瞬見える。
いるはずのない彼が、いた気がした。
ただの空想。
痛々しい。
「二つも食えるかな...」
他に人を呼ぶか?
いや、めんどくさいし、そんな気分じゃない。
「明日の朝でいいか......」
ラップをして冷蔵庫に入れておく。
そうだ、冷めないうちに食べないと。
「いただきます......」
いつも通り作ったのに、いつもの味なのに、何か違う。
何かが足りない。
「バルト......」
思い返せば、いつもの食事にはバルトがいた。
大切な人が幸せそうに、美味しそうに自分の作ったものを食べてくれるから......。
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ゼパル(プロフ) - 美桜さん» ここまで読んでくださってありがとうございました! 神様、気に入ってもらえて嬉しいですw この神様、基本的にどこにでも現れるので他の作品にもたぶん現れることでしょうwww 次作も凄いグダグダになると思いますが頑張ります。応援よろしくお願いします! (2018年5月4日 20時) (レス) id: 98d50997c8 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 自作→次作でした (2018年5月4日 18時) (レス) id: 1a66139d25 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 愛あるお話でとっても素敵でした!今一番気になるお話だったので完結嬉しいです^^バル&シュウの関係が好きで小説書き始めたくらいなので。最後のカミサマも好きな要素でドハマリでした^^才能凄いですね!自作も楽しみにしていていいですか?応援しています (2018年5月4日 18時) (レス) id: 1a66139d25 (このIDを非表示/違反報告)
なんくるないさー(プロフ) - 完結おめでとうございます。すごく面白かったです! 次の作品も頑張ってください! (2018年5月4日 14時) (レス) id: a5f07e3e68 (このIDを非表示/違反報告)
ゼパル(プロフ) - 美桜さん» 初コメありがとうございます。泣いてもらえるなんて嬉しいです(笑) まだまだ語彙力低いですが、もっと精進しますね。 短編なのでもうすぐ終わってしまいますが、最後まで読んでくれたら光栄です^^* 美桜さんの作品、時間があったら読ませていただきますね (2018年4月25日 18時) (レス) id: 98d50997c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゼパル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/bf379540b81/)
作成日時:2018年4月19日 21時