53：最後の修行＿３ ページ8
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夜になり、夕食の川魚を焼き上げる為に焚き火に火を起こすと、冷め切った体を温めるように、みんなこぞって集まりだした。
｢悲鳴嶼さんって本当に鬼殺隊最強だよね〜｣
夏香が程よく焼けた川魚を一口かじりながら、呟いた。
｢あー、それは俺も思ったわ。聞いてたよりも何倍も強いよな｣
｢匂いも他の柱と全然違うよね。師範は日の呼吸と痣が出てるから最強だけど、元の能力値で言ったら余裕で超えてると思う｣
｢俺もああなりてぇな〜｣
｢天元も悲鳴嶼さんと同じくらいの大きさの岩を動かせればいいんじゃない？｣
｢無理だわ！｣
｢筋肉ダルマなんだからいけるっしょ｣
｢いけねーよ！｣
｢努力次第じゃないの？｣
｢努力してもアレは無理だろ。出来たとしてもあと何年かかると思ってんだ｣
天元が2匹目の魚にかぶりつき、夏香も負けじと2匹目を食べ始めた。私はと言うと、その戦いには参加せずに、師範直伝の炊き方で作ったご飯をみんなに配り歩いていた。
｢ん、ありがとう〜｣
最後は夏香に渡し、私も座って魚を食べ始める。
｢俺にも魚ちょうだい〜｣
稽古から戻ってきた若干濡れている明が、よたよたと焚き火の前に座り込んだ。歯をガチガチ鳴らしながら、子鹿のように震えている。
｢お疲れ様。これ使って｣
｢ありがとう〜｣
泣きそうな顔で私からタオルを受け取り、髪から滴る水を丁寧に拭いている。
｢温もりが愛おしいってこういう事だよな〜｣
｢そうなの？｣
｢まぁ火が暖かいのも、誰かの優しさで心が温まるのも、両方ありがたみを感じるよな。特に好いてる奴からされたら派手に嬉しい。俺の場合は嫁たちだな｣
｢へ〜｣
｢まだ嫁じゃないだろ｣
｢どうせ結婚すんだから嫁で良いだろ｣
｢どっちでもいいだろ〜｣
｢まあまあ、喧嘩しないで｣
夏香が私をギュッと抱きしめ、天元も彼女の真似をするように私に抱きついてきた。
｢私はAといる時、いつでもそう思ってるよ｣
｢俺も思ってるぜ。Aには派手に世話になってるからな｣
｢おい宇髄、私は？｣
｢はいはい、夏香にも世話になってますよ｣
｢私もみんなのこと大好き。いつもありがとう！｣
私も心を込めて抱きしめ返し、そこに明も乱入してみんなで笑い合いながら、岩柱の稽古初日は終わりを迎えた。
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作者名：ゼパル | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/bf379540b81
作成日時：2023年8月24日 23時
