三日月:鬼となったもの《中》 ページ16
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「っ!」
俺が痛みに悶絶していると、刹那がそれを見て軽く笑った。
「ちゃんと痛覚はあるみたいね」
「……騙したのか?」
「ふふ、ついでの確認よ。ほら、ちゃんと刀を見て」
俺が刃から手を離すと、突然刀が脈打ち始めた。
じわじわと俺の流した血を吸収して、折れたはずの部分が修復されていく。それに合わせるように鼓動は治まっていき、最終的には元の日輪刀に戻っていった。
「凄い……」
「この刀は貴方の血肉を使って何度でも作り直すことができるの。慣れれば自由自在に形を変えられるわ」
唖然としている俺を見て、彼女は満足気な顔をした。
「さ、そろそろ移動しましょう。立って」
刹那の差し伸べてくれた手を取り、起き上がる。彼女に連れていかれるまま進んでいくと、大きく開けた場所に着いた。
「ここは?」
「無限城の中心部よ。あそこに座っている鬼がこの空間を作り出しているの」
俺と無惨をここに移動させた琵琶の鬼だ。刹那とは別の移動系の血鬼術を持つ鬼。仮に鬼殺隊がここに来れたとすれば、まずはあれを仕留めないと面倒事になりそうだ。
「名前は?」
「鳴女よ。彼女も新しい上弦の一人なの。う〜ん、それにしても他の上弦はいないのね。私の時はいきなり全員と顔合わせしたけど……。まあ、貴方の事を恨んでいる鬼も沢山いるだろうから、賢明な判断ね。さすが無惨様」
「さっきから気になっていたんだが、お前は何で奴の名前を言っても大丈夫なんだ? 普通の鬼は死ぬはずだろ?」
「嗚呼、あれね。無惨様のあれはなんて言うか……無惨様って名前を呼ばれると感知することが出来るの。それでその度に殺すか殺さないか決めてるのよ。だから許されてる人も結構いるの」
「へぇ、じゃあ俺が呼んでも大丈夫なのか?」
「もちろん。会話するのにも不便だしね。無惨様は今お出かけ中だから、帰ってきてから色んな話をしましょうね」
「……するもんか、あんなやつと」
「ふふ」
刹那が部屋の一室から飛び降り、無限城の下へと潜っていく。
その場で彼女の様子を伺っていると、かなり下がった所にある出っ張りに降り立った。
「来て!」
大きく手を振って俺を呼ぶ彼女を眺めながら、どうしようかと考えていると、琵琶の音が鳴り、足場が無くなった。
「うわっ!」
「ふふ、鳴女ありがとう〜」
「いえ」
そのまま刹那の横を通り過ぎ、開いていた襖の中に落ちていく。
「さあ、そのまま最初のお仕事に行きましょう」
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作者名:ゼパル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/bf379540b81
作成日時:2023年8月24日 23時