【実況者】音楽と共に (ページ1)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:312 hit

三月がずっと続けばいい/三月のパンタシアページ1

春。
す
三月。

言わば出会いと別れの季節。

俺には、想い人がいる。

『ねぇ、鬱先生。私が死んだら、貴方の中に私は居なくなる？』

「ううん。俺の中にAはずっと居るよ」

『そう。それならよかった』

彼女は、余命数ヶ月だ。

よくこのような事を聞いてくる。

本当、冗談に聞こえないからやめて欲しい時もあるけど。

俺は彼女を好きになるまで、女誑しと言われていたほど女と遊んでいた。

ここまで一途になれたのは初めてだ。

彼女は、よく笑う。

彼女は、不器用。

彼女は、純粋。

俺には持っていない物を全て持っていた。

それに惹かれたんだと思う。

「…なぁ、A」

『ん？なぁに？』

「…いや、空が綺麗やね」

『うん。風が気持ちいいしね』

言えなかった。

嘘はつきたくない。

でも、真実を伝えたくない。

三月がずっと続くのなら。

彼女が、ずっと俺のそばに居てくれたら。

そんな願い事叶わなくたって、俺の中には、Aが居る。

俺の中で、俺だけのAを探す。

キモいなんて思われるかもしれない。

でも、それでも、

「さよなら」までは泣きたくないから。

本当は“いつか”を知りたくなかった。

でも、彼女の為に。

最後を知っておかないと。

桜さんよ。

俺を“いつか”まで笑顔でいさせてや。