【浦島坂田船】大好きなうらさかと大嫌いなしません

■ twenty three ページ31

.



｢え〜久しぶりにあった幼なじみにそれはないんじゃないの｣

困ったような笑みを浮かべながらわざとらしく肩をすくめる目の前の男。
その男の発言に目を丸くする浦島坂田船。

｢お、幼なじみぃ？！｣

｢まじか……何で教えてくれなかったの｣

｢やめてよ……そんな仲良くないってば｣

顰めた顔を崩さずにうらさかに向き直る。
何故かこいつと幼なじみと言われるだけで虫唾が走る。相変わらずにこにこしてるなぁ。こいつのせいでどれだけ振り回されたことか。
この浦島坂田船の大好き大嫌い空間が苦しくないのもこいつのせいだ。いや、おかげと言った方がいいのだろうか。

｢ち、ちなみにやけどまふくんってこいつのこと好きなんですか？｣

センラくんが私を指さしながらまふくんに問う。何故いまそれを質問したのだろう。中学生かセンラくんは。あんまり話したことのない人の好きな人気になるよね、中学生って。

というか忘れてたけどその質問は結構な愚問だ。なぜなら、

｢Aちゃんのこと？うーん、大好きだけど大嫌いかなぁ！｣

……出たよ。
『大好きだけど大嫌い』、ほんと意味わかんないんだけど。意味わかんなすぎてセンラくんの顔が気持ち悪いくらい微笑んでいる。( ？ )

そう、私の幼なじみのまふまふ( 自分で言ってぞっとした )は私のことが｢大好きで大嫌い｣なのである。訳分からん矛盾を抱えて早数年、未だに私はその意味を分かっていない。

彼は｢大好き｣にも｢大嫌い｣にも属さない不明な人種。私がこの空間で狂わないのも彼のおかげなのかもしれない。

□ twenty four→←□ twenty two

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す