三百十九夜。 ページ20
誰だって自分の傷は見られたくないものだ。神田の方をなるべく見ないように、私は前を通り過ぎていく人を目で追いながら問いかけた。
『…戦闘中に怪我でもした?』
「お前のイノセンスは、今どんな状態だ?」
『え?私のイノセンス?…いつもと変わらないよ。手首に金属の腕輪が…』
袖を捲り、腕を神田に見せようと思わず目線をそちらに向けてしまったその時、私の視界の端に浮き出た無数の血管と十字架のような模様が映った。私は思わず言葉を失い、唾を飲み込む。
「リナと同じ状態だな。それが正しい在り方なんだろ」
『どうしたのその腕…』
「あ?俺が聞きたいくらいだ」
私は十字架が皮膚に現れる現象を体験している。あれは、イノセンスに自分の覚悟を伝え、進化したイノセンスを体内に取り込んだ時に出るものだ。現に私もロードの精神世界の中でそうなった。
『神田、貴方もしかして…結晶型になったの…!?』
「…よく分かったな」
『だってその十字架は、取り込んだ時に出てくるものでしょ!?私もそうなったもの!』
何故だか焦ってしまって、つい口調が荒くなる。痛むのか神田の表情もいつもの様子と少し違うように感じた。
『簡単な処置なら出来るわ。痛むんでしょう』
「触るな」
『でも…』
捲っていた袖を元に戻す神田に鋭い目つきで睨まれ、私はぐっと伸ばした手を引っ込める。
どうして結晶型に進化した神田の腕があんな状態に?何か拒否反応を起こしているような、そんな感じに見えてしまう。
記憶の断片に神田に拒否された事よりも何か引っかかるものがある感じがした。視線を神田の腕から外し、必死に記憶を辿っていく。あの十字架を中心に浮き出た血管…あれは…
あれは、咎落ちとなってしまったスーマンの巨体に浮き出ていた模様と似ている。
それだけじゃない。元帥となり様々な極秘資料の閲覧が解禁された。その中にあったイノセンスについての資料。その決して良い状態とは言えないものに酷似しているのだ。
「…咎落ちの前兆…か…?」
『!!』
自分が考えてしまった悪しき事を言い当てられたように感じた。しかし、神田はつい先ほど袖を元に戻し終えたようで、自分の口から出た言葉が私の耳にまで聞こえているとは全く気付いていない。
神田は一度イノセンスを捨てた?アルマと逃亡した時に?じゃあ何故イノセンスは再度彼を受け入れ、今こんな状態になっているの?
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あずさ - お忙しいとは思いますが、更新楽しみにしています!! (2020年1月28日 18時) (レス) id: dc5172fd12 (このIDを非表示/違反報告)
Rico(プロフ) - こんにちは。アレンくんと夢主ちゃんの今後が楽しみです。お忙しいかもしれませんが、更新頑張ってください! (2019年8月17日 1時) (レス) id: 3a6a1a4cba (このIDを非表示/違反報告)
歩。(プロフ) - 更新お待ちしてます! お忙しいとは思いますが楽しみにしています! (2019年4月23日 4時) (レス) id: f251146aad (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 楽しみにしてます(`・ω・´)ゞ (2018年10月20日 19時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
パオパオ - めちゃおもしろいです!!!続き楽しみにしてます!!!! (2018年1月20日 21時) (レス) id: 89165a1c38 (このIDを非表示/違反報告)
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