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ぎゅっと目を瞑るココを見て、本当に後悔しているのがひしひしと伝わってきた。
その一瞬の静寂を破ったのは、明るめに発せられたキーフリーの声。
「そろそろだよ、2人とも」
「本当だ。さすが羽根馬車は早いね。ココ、見える?」
「僕とAのアトリエ、きみの学び舎だ」
羽根馬車から降り、キーフリーが荷物を運んでくれている間に料金を払う。
その間、ココは少し離れたところから身体に巻かれた布をぎゅっと掴んで私を見ていた。
「ココ、遅くなってごめん。風邪引いちゃうね。アトリエに入ろうか」
「Aさん、私…お母さんを置き去りにしてきちゃった。1人にしないって約束したのに…」
「…ココ、私ねこのネックレスを身につけてるとすごく安心できるんだ。ココのお母さんが想いを沢山込めて作ってくれたからだと思う」
溢れる涙を拭う手を止めて、ココは私の首元に光るネックレスを見た。
「想いを込めて作られたものにはその人の魂が宿るの。だから、ココのお母さんは側に居る。お家の周りには誰にも荒らされないように門番茨っていう植物の種を蒔いてきたから安心して」
かつての別れの時のように、ココの柔らかい頬を両手で包み込み目線を合わせる。私の指に伝う涙をくいっと拭って満面の笑みを見せた。
「ココとココのお母さんが願ってくれたおかげで、今の私は一人前の立派な魔法使いになれたんだよ。今度は私が力を貸すから。ゆっくり色々な事を知っていこう」
「……はいっ」
「私も一生懸命サポートするからね!」
少し涙がひいて笑顔を見せてくれたココと手を繋ぎ、アトリエの中に入る。
そこにキーフリーの姿はなく、テーブルの上に浮水滴が置かれていた。
「ココ、これで顔を洗おっか」
はい、どうぞ。と手渡せばココは首を傾げて、難しい顔をしている。
「水だよ。どうやって使うと思う?」
じっと浮水滴を見つめるココの表情からは、使用方法を考えている反面、昨晩の事があってか知らない魔法が怖くて触れないという気持ちも感じ取れた。
この、ココの魔法に対する恐怖心を少しずつ取り除いていくことが、第一の目標だ。
「ココ、大丈夫。アトリエには私もキーフリーもいるから全部に挑戦して良いんだよ。何があっても弟子を守るのが先生の役割でもあるからね」
「あ!A先生!帰ってきてた!」
「テティア、おはよう。よく眠れた?」
「バッチリです!」
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アストル(プロフ) - 通行人Mさん» 2回目のコメントありがとうございます!また来てくださって嬉しいです(´˘`*)ほんとに中々ありませんもんね...私も少しずつわかってきた原作の設定を織り交ぜていこうと考えています。オチをどのようにするか迷いますね.... (2020年2月23日 22時) (レス) id: b8413c3aa3 (このIDを非表示/違反報告)
通行人M - 単行本買ってから思い出して来てみましたー。それにしてもΔ帽子の夢作品増えませんね…設定が緻密でまだまだ謎が多いから難しいんですかね…。これからもちょくちょく覗きますね。 (2020年2月23日 19時) (レス) id: cbf5c5978e (このIDを非表示/違反報告)
通行人M - うわわ…ほんと…好みです……ありがとうございます…… (2019年7月31日 20時) (レス) id: ea843ff10e (このIDを非表示/違反報告)
月夜魔法 ルナ - すごくおもそろかったです! (2018年7月15日 10時) (レス) id: 26180cce76 (このIDを非表示/違反報告)
タルト(プロフ) - 読んでいてとても楽しいです。読みやすく最高です!!これからも頑張ってください、応援しています! (2018年5月17日 19時) (レス) id: ac7dbf19f0 (このIDを非表示/違反報告)
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