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最近は忙しくて、数年前のように頻繁には店に来れていなかったのだが、その少しの間に顔つきが大分大人っぽくなったなぁと感じる。
「タータくん」
「!……Aさん…?」
肩を少し揺らしてこちらを向くタータくん。
その瞳は警戒していたものからゆっくりと穏やかなものへと変わった。
「久しぶり。中々会いに来れなくてごめんね」
「本当に久しぶりですね。……もう来てくれないのかと……あ、いえ、すみません。今のは忘れて下さい」
ハッとして口を押さえたタータくんの顔はほんのりと赤くなっている。
最初はキーフリーに敵意を持っていたようだけど、今は普通に話す仲へと進展している。
でもテティアやリチェ達とは話している場面を見たことがない。
だからか、数回タータくんとは会ったことがあるけれど三人とも名前を知らないようで、魔材屋さんの男の子と呼んでいる。
「新しい弟子が増えたんですね」
「そうなの。ココって言ってね。とっても良い子だよ。皆良い子なんだけど」
「…そうですか。羨ましいな」
そうポツリと呟いたタータくん。
彼の目について知ったのはつい最近のことだった。
一人で買い物に来た際にノルノアさんが教えてくれたのだ。
私に懐いてくれていた彼は、幼い頃私の弟子になって魔法使いになるのが夢であったとも聞いた。
「タータくん、これなーんだ」
「それは……Aさんだけに作った」
「そう。タータくんが作ってくれた杖。私あれから色々杖を貰うことがあったんだけど、どうしてもタータくんが作ったものが一番良くて、今でもこれを愛用してるの」
そうなんですか、と目を見開く彼からは、見るからに分かりやすく嬉しいという気持ちが溢れ出ていた。
「勝手だけど私ね、タータくんが初めて杖をくれた人でしょ?だから私の杖職人さんって感じがしてるんだ」
「それ…ホントに?」
「本当だよ。だってこの杖じゃないと良い魔法が描けないんだもの」
「…ありがとう。まだまだこれから、良い杖を作っていくんで、また来てください。Aさん専用の杖も作るんで」
「え、良いの?そんなこと言われたら、お言葉に甘えちゃうよ」
「はい。甘えちゃってください」
思わず楽しみになって笑みが浮かぶ。お願いします、と伝えるとタータくんも元気に返事をしてくれた。
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アストル(プロフ) - 通行人Mさん» 2回目のコメントありがとうございます!また来てくださって嬉しいです(´˘`*)ほんとに中々ありませんもんね...私も少しずつわかってきた原作の設定を織り交ぜていこうと考えています。オチをどのようにするか迷いますね.... (2020年2月23日 22時) (レス) id: b8413c3aa3 (このIDを非表示/違反報告)
通行人M - 単行本買ってから思い出して来てみましたー。それにしてもΔ帽子の夢作品増えませんね…設定が緻密でまだまだ謎が多いから難しいんですかね…。これからもちょくちょく覗きますね。 (2020年2月23日 19時) (レス) id: cbf5c5978e (このIDを非表示/違反報告)
通行人M - うわわ…ほんと…好みです……ありがとうございます…… (2019年7月31日 20時) (レス) id: ea843ff10e (このIDを非表示/違反報告)
月夜魔法 ルナ - すごくおもそろかったです! (2018年7月15日 10時) (レス) id: 26180cce76 (このIDを非表示/違反報告)
タルト(プロフ) - 読んでいてとても楽しいです。読みやすく最高です!!これからも頑張ってください、応援しています! (2018年5月17日 19時) (レス) id: ac7dbf19f0 (このIDを非表示/違反報告)
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