身体の傷 ページ2
案内を受けて連れてこられたのは、ごく一般的な診察室だった。
椅子に座らせられた。
「じゃあ早速だけど、傷を見せてくれないかな」
俺に優しく声をかけたのは、長髪の医者だった。
この街___限らずもだが___に住んでいるならば、誰もが知っているであろう“天才”と呼ばれる医者。
そして、この街の代表の1人だ。
思わずじっと見つめてしまう。
すると「おや」という返事がきた。
「自己紹介がまだだったかな。私は神宮寺寂雷。この病院の___」
「医者だ。それに、ここの代表人物だ。それぐらいは知ってるさ…おまけに前に1度会ったしな」
「そういえばそうだったね」
くすりと笑う男は、まるで白衣の天使を思わせる。そのくらい穏やかだった。
そして、「せんせー忘れっぽくなってね!?」と笑う声は後ろから聞こえた。
「あん時は手当してくれてさんきゅ!俺っちは、伊弉冉一二三…よろしくな!」
「…よろしくホストさん」
この男の不思議なところは、俺の顔を見る度に少しだけ悲しさを露わにすることだ。
そう。目と目が______ぴたりと合った時に。
…まあいいか。
そう思い、俺は不意打ちのように服を捲り上げた。
「これは…」と声が漏れる医者。無理もない。
______俺の腹部には深い古傷が幾つもあるからだ。
「まだあるけど…見る?」と聞くと「…興味深い」と返された。
「…どうせ俺のこと知ってるなら自分から話すよ。この傷とか___ヒプノシスマイクのこともね」
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作者名:蠍座 | 作成日時:2019年1月4日 19時