【彼方】と【此方】 (ページ9)

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第七話：「自宅」ページ9

五虎退「あ……そ、そろそろ帰らないと…いち兄との約束の時間です…」

不意に、五虎退君がそう言った。
時間は……１８時００分。
つまり６時丁度だ。

毛利「もうそんな時間ですか～。
名残惜しいですけど、帰らないといけませんね。」

後藤「だな。じゃないといち兄に怒られちまうからな。」

堀川「あっ、僕達もそろそろ行く時間だね。」

兼定「えっ、もうかよ！？」

堀川「駄目だよ兼さん。
時間はちゃんと守らなきゃ。
それに、心配しなくてもお祭りは明後日までやってるんだしさ。」

そっか……皆帰っちゃうんだ。
まぁ粟田口の子達は門限とかもあるんだろうし、当然と言えば当然か。
私もそろそろ帰ろうかな…。

厚「A姉はどうすんだ？」

『うん、私もそろそろ帰ろうかな。
元々此処には休憩する為に来てたし、もう十分休めたから。』

秋田「そうですか…」

乱「じゃあ、また今度遊ぼうね！」

『良いよ。』

包丁「約束だぞ！」

包丁君が笑顔で小指を出したので、私もしゃがんで小指を出して指切りをした。

『っ……？』

あれ……？
今、一瞬だけ小指が痛くなったような…。
けれど、それは本当に一瞬の事だったし、痛みはもう無かったので、私は気のせいだったと片付けた。

前田「では、僕達はこれで！」

平野「いち兄や鶯丸様達に会ったら、よろしく伝えておいてください！」

兼定「じゃあな、A！」

『うん、じゃあね。』

皆に手を振って、私は背を向けて歩き出した。
楽しかったし……少しは勉強に集中出来るようになったかも。

『……』

ふっ、と微笑んでしまいそうになるのを何とか抑えて、私は家路を歩いた。

『……ただいま。』

ドアを開けると、リビングから「お帰り」という母の優しい声が聞こえた。
あ、お母さん帰ってきたんだ。

『ただいま、お母さん。』

母「お帰りA。
お祭りに行ってたの？」

『うん、ちょっと休憩にね。』

母「そう。……今日も晩御飯は適当に食べててね。」

お母さんはちょっと眉を下げて言う。
それに対して、私は普段通りの笑顔で返事を返した。

『それじゃあ私、勉強してくるね。』

母「勉強、頑張ってね。」

お母さんにそう言って、私は自分の部屋に戻ってドアを閉めた。

『…………はぁ……』

思っていたよりも重い溜め息をつきながらも机に向かう。
窓からはお祭りの灯りがボンヤリと見えていて、さっきの光景を思い出した。

『……楽しかったな。』

私はそう呟いて、参考書を開いた。