【彼方】と【此方】 (ページ4)

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第二話：「賑わう会場」ページ4

それからというもの、私は再びお祭り会場を練り歩いていろんなお店を見て回っていた。

『色んなお店があるんだなぁ…』

射的、輪投げ、ヨーヨー釣り、金魚すくいなどの遊戯の屋台もあれば、焼きそばやわたあめ、飴細工などの食べ物の屋台もある。
どの屋台にもお客さんが集まっていて、お店の人達も忙しそうだ。

「あの、すみません。
ちょっと良いですか？」

『え、あ、はい？』

声をかけられて後ろを振り返ると、私と大体同じくらいの身長の男の子が立っていた。

？「こっちで髪の長い長身の男の人を見かけませんでしたか？
一緒にいたんですけど、はぐれちゃって…」

長髪長身の男の人…。
記憶を探ってみるも、そんな人を見かけた覚えはなかった。
私が首を横に振ると、その子は困ったように眉を下げた。

？「そうですか……困ったなぁ。
兼さん一人じゃ勝手が分からないだろうからついてきたのに…」

『……探してる人、兼さんって言うの？』

そう聞いた瞬間、私はハッと口を塞いだ。
いけない、突然そんな事聞かれても相手に不審がられちゃうじゃんか。
恐る恐る相手の様子を窺うと、その子は目をキラキラとさせ、笑顔で答えた。

？「はい！兼さんは凄く格好良くて、僕はそんな兼さんの助手なんですよ！」

『へぇ…』

助手って事は、「兼さん」は彼の仕事先の上司か何かなんだろうな。
嬉しそうに語っているのを見て、私は気が付いたら小さく笑っていた。

『ふふっ……』

？「…？」

『あ、ご、ごめん。笑っちゃって。
貴方にとって、その兼さんって人はすごく大切な人なんだね。』

私は誤魔化すように笑った。
ポカンと私を見ていたその子も、やがて柔らかく笑うとコクリと頷いた。

？「……うん。
兼さんは、僕の大切な相棒だよ。」

『そっか。
………あのさ、良かったら私も兼さんって人探すの手伝おうか？』

？「え？でも、良いんですか？
その、お友達とか…」

『平気。今日は一人で来てるから。』

？「そっか。じゃあお願いしようかな。
あ、僕は堀川国広です！」

『え、ぁ………坏陰A、です。』

堀川「Aさんですね！」

突然名乗られたので、私も慌てて答える。
堀川君は人懐っこい笑顔を浮かべると、私に手を差し伸べた。

堀川「行きましょう、Aさん！」

『あ……うん。』

そのまま、私は堀川君と「兼さん」探しを始めた。