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聞いた日。 ページ8

「……、A。少し、店に行かないか」

「あ、……はい。織田さん」

死体の片付けもそこそこに、私達はカフェに向かいました。

其処で、ぽつぽつと織田さんは語り始めました。目をそらしながら、小さな声で。

ポートマフィアに属していること。
最下級構成員であること。
人を殺さない事を信条にしていること。

___小説家を、目指していること。

「Aを、騙そうとしているわけでは、なかった」

すまない、と織田さんは続けました。
その姿が、ひどく小さく見えて。私よりもずっと上背があるのに、怒られるのを恐れるような子供のような姿でした。

無言でいる私に、織田さんは再び口を開きました。

「もう、店へは行かない」

「なっ、何でですか……!?」

告げられた言葉の衝撃に耐えられず、思い切り机を叩きながら立ってしまいました。
周りのお客様の視線が刺さりに刺さります。痴話喧嘩とでも思っているのでしょう。

「マフィアの人間が居るなんて恐ろしいだろう」

そんな事無い、とすぐに云えませんでした。だって、私はあの時、『怖い』と思ったのですから。
口籠る私を痛ましげに彼は見て、席を立ちました。慌てて私も席を立ち、その背中を追いかけました。

けれど、

「来るな」

はっきりとした拒絶の声に、足が止まりました。

小さくなっていく織田さんを、私はただ、見つめていることしか出来ませんでした。

___それから織田さんは、店に来なくなりました。


この記憶だけは、本当に、忘れてしまいたい。織田さんの、悲しい顔は記憶の底に封じ込めて、貴方の笑った顔だけを憶えていたい。

叫んだ日。→←知ってしまった日。



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べにしょうが(プロフ) - もえさん» コメント有難うございます!もう一度読もうと思ってくださって嬉しいです!!こだわって、丁寧に書いた所を好きだと言ってもらえて幸せです。この小説に出会えて幸せと言っていただいて有難うございます!こちらこそ幸せです!読んでくださって有難うございました!! (2021年8月7日 22時) (レス) id: f3b55f3d47 (このIDを非表示/違反報告)
もえ - 今日はちゃんと最後まで読むことができました、織田作の優しさとたまに見える青年らしさからくる脆さがすごくすごく悲しくなって好きです。この小説を書いてくれてありがとうございます。この小説に出会えて本当に幸せです。駄文長文で申し訳ないです… (2021年8月7日 22時) (レス) id: 76c1001e6f (このIDを非表示/違反報告)
もえ - 前に一度拝見させていただいたのですが悲しくて辛くなって途中で読むのをやめてしまいました、今日織田作の夢小説を漁ってたところこの小説にたまたま出会った為何かの縁だと、もう一度見ることにしました。夢主の幼い子に語りかけるような優しい口調に何度も泣きました (2021年8月7日 22時) (レス) id: 76c1001e6f (このIDを非表示/違反報告)
べにしょうが(プロフ) - 雨音。さん» コメント有難うございます!嬉しすぎて何を書けばいいのかちょっと迷っているのですが、あの、すごく嬉しいです!5票目が入ってた時の気持ちは今でも覚えてます……!雨音。さんだったんですね!報われた感じがしたのを覚えてます。雨音。さんも更新頑張ってください! (2021年7月10日 13時) (レス) id: f3b55f3d47 (このIDを非表示/違反報告)
雨音。(プロフ) - 支離滅裂なコメントで申し訳ありません。語彙力がないので上手く表せませんが、とにかく好きです!素晴らしい作品をありがとうございました!! (2021年7月10日 13時) (レス) id: f0e54de105 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:べにしょうが | 作成日時:2021年1月13日 7時

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