どこにでもありそうな物語。 N.kazunari (ページ31)

今日:4 hit、昨日:8 hit、合計:63,198 hit

３１.半分こページ31

二人きりになった瞬間に煩くなる心臓が、
二宮さんへの想いを明確にする。

やっぱり諦められない、と
この気持ちを無かったことにはできない、と

分かり切っているのに

届かない。

届かずに宙に浮いたその気持ちは

春を知らせる少しだけ暖かさを帯びた風が
残酷にもふんわりと攫って

夜の中に消えて行ってしまう。

「コンビニ寄っていい？」
「どうぞ。」

猫背な背中をぼんやりと見つめながら
後に続いて中に入った。

入るなり、迷わずパンコーナーに向かう二宮さん。

明日の朝ごはんを買うのだろう、
メロンパンを手に取って籠に入れた。

「好きなんですか？」

そういえば二宮さんの家で出勤前の朝、
急かされまくりながらも
必死にメロンパンに齧り付いたことがあった。

「好きー、なのかな。うん。死んだ彼女がよく買ってきたからさ、なんかその癖で。」
「・・そうなんですね。」

メロンパンを買う度、
その彼女のことを思い出してるのかな。

・・・そりゃ、そうか。

私は、その人には敵わないのかな。
これからも、ずっと。

そんなことを考えて泣きそうになってしまった。

ツンとした鼻をぐっと指で摘んで
涙を必死に堪えた。

最近、涙腺が弱すぎる。

すぐに弱音を吐きたくなってしまう。

ダメだなぁ、自分。

ハァ、と溜息が漏れてしまう。

「なんか欲しいもんある？」

二宮さんが私の顔を覗き込むようにして
見つめて来るから

泣きそうになってるのがバレないように
「アイス」ってアイスコーナーの方に体をくるりと回転させて顔を背けた。

そしたら背中から

「ンフフ、こんな寒いのに？」

って声が聞こえたけど、
無視してアイスコーナーまで足を運んで
私の大好きなアイスを手に取った。

「ん、入れて」

二宮さんの持っていた籠を目の前に突き出されて
お言葉に甘えてアイスを籠にソッと入れた。

お店を出て直ぐにアイスを出す。

半分に割れるタイプのモノだったから
「はい。半分こです。」

二宮さんに片方のアイスをあげた。

「ンフフ、かわいいな、お前。」

小馬鹿にされて
「じゃあ、あげないです。」

取り返してやったら、強引に奪い返されて
パクッと二宮さんがアイスを咥えた。

「やだよ、俺のだもん。」

アイスを咥えながら言う二宮さんが
やっぱり愛らしくて

カップルみたいなやりとりに

キュン、とまた胸が疼く。

冷たい口の中とは対照的に
じんわりと胸が熱くなるのを感じた。