２２.矛盾 ページ22
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「そーゆーの、キライなんだよ。ムカつく。」
二宮さんは道路の脇で
立ち止まって静かに、でも荒々しい言葉遣いで言葉を零した。
私は、それを、聞くしかできなかった。
何も反論できなかった。
「オレにその間を縮めて欲しかった？」
「何も言わないのはその通りだから？」
一言、一言がグサリと胸に刺さる。
その通りだった。
期待してた。
あの日の朝みたいに
二宮さんから引っ張って、近寄って、
距離を縮めてくれるのを。
私を必要としてくれる、その手を、求めてた。
「…ごめんなさい。」
消えて無くなりそうな、掠れた声が出た。
呟くようにしか、言葉を紡げなかった。
二宮さんの目を見ることすら、
それすら、怖くてできなかった。
私は、私が思っている以上に
おそらく、二宮さんに心を奪われていて、
二宮さんが消えてしまうことを
何より恐れていた。
嫌われるのが、怖かった。
気兼ねなく、
二宮さんに逢いたい、と伝えることができて
二宮さんに逢いたい、と我儘を言えることができる
そんな存在になりたかった。
から、だから、
二宮さんの気持ちが分からないから、
私には全然読めなかったから
探ることしかできなかった。
詮索して、少しだけ距離を置いて
二宮さんの側にいる事しかできないの。
そうさせているのは、
紛れも無い、二宮さん、アナタでしょ？
「・・狡いです。」
「どこが。」
「二宮さんは、残酷です。」
「答えになってないけど？」
「全部、二宮さんのせい、です。」
苦しくて、苦しくて、
この上ない程、苦しかった。
地面をポツリ、ポツリ、と
涙の雨が黒く染めていく。
泣いていた。
溢れて、溢れて、苦しかった。
涙なんて、忘れたと言っても過言ではなかった。
心を氷のように凍らせて
何もかもに関心を持たないようにしていた。
許そうとしなかった、ヒトも、何もかも。
でも、私は、この人を、二宮さんを、
いつの間にか
求めて、許して、好きになっていた。
二宮さんだけには、心が言うことを聞かなかった。
「泣く女がイチバン、キライなんだけど。」
冷たい、棘のある言葉を私に投げて
それなのに、
私の頭を二宮さんの胸に引き寄せて
優しく、抱きしめてくれた。
言葉と行動が、矛盾してる。
狡い、ずるすぎるよ。
キライなら、私を置いて消えて欲しかった。
優しく私の涙を拭う親指が
もっと、私を傷つけるんだよ…？
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作者名：べに | 作成日時：2017年2月24日 8時
