１６.柑橘系 ページ16
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今日はなんだか気分が良くって、
ついつい、
お酒のペースも進んでしまう。
「なぁ、お前飲みすぎだってば…」
なのに、
二宮さんは私の心配ばかりして
全然グラスに入ったお酒は減っていない。
「あ…いやですー。返して下さいー。」
自分のグラスを一気飲みしようと
手に取った瞬間だった。
二宮さんが私のグラスを取り上げて
マスターに、「水ちょうだい」って注文した。
「水でも十分楽しめるだろ？」
これにしとけ、と二宮さんの目が言う。
伝わってくる。
でも、今日はたくさん飲みたい気分だったのに…
「二宮さんのばかー。お手洗い行ってくる。」
急に立ち上がると
クラッとして体が言うこと聞かなくて
ヒールを履いているせいで
尚更、不安定になる。
こけそうになった私の腰を二宮さんが
グッと後ろから支えてくれた。
「あのさ、こうなるの自分で分かっててあんなペースで飲んでたの？」
「べ…別にまだ平気だもん。」
「子供じゃないんだから。ほら、段差あるからそこ、気を付けて。」
結局二宮さんは私をお手洗いまで
連れていってくれた。
鏡に映る私は顔がほんのり赤くなっていて
あんまり、顔にでるタイプではないはずなのに
今日は結構飲んだんだな、っていうのが
わかるレベルだった。
う…なんか気持ち悪い気がする…
出そうで、出ない、
そんな状態が続いてて
もう何分経ったかわかんない。
意識も、途切れ途切れになってきて
急な睡魔が襲ってきた。
「Aちゃん？無事？」
トイレのドアの向こう側から
二宮さんの声が聞こえて
朦朧としていた意識がすこしだけ戻る。
頑張ってトイレのドアを開けようとしたけど
思いの外、
身体は言うことを聞かなくって
トイレの扉を上手く開くことができない。
そしたら、
ガチャ、っと勢いよく開かれて
「わっ…」
前方に体重をかかったままの私の身体は
そのまま前屈みに倒れて
「おっ、と…」
二宮さんに抱きしめられる様に
受け止められていた。
ふんわりと、檸檬のような、なんだろう、
柑橘系の香りが鼻を擽る。
二宮さんの、匂いだぁ…
もう、嬉しくて堪らなかった。
のと同時に、なんだか安心して
私の記憶は、そこまで・・・。
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作者名：べに | 作成日時：2017年2月24日 8時
