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12.残酷 ページ12

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細い、二つの影が並んで、揺れる。




心地いいなぁ、と思うのは


春が近づいているから?

ゆっくり時間が流れる
この、夜特有の雰囲気のせい?




それとも






隣にいる人が、二宮さんだから?






わからない。

でも、居心地が良いのは確かだった。



「ここら辺で、いいです。」



私の家まで歩いて15分ほどの距離になった。
送って行くと言われたけれど

流石に、家までは気が引けた。



「こっからあとどんくらいなの?」
「15分、程度です。」
「ここまで来て最後まで送んないのもアレでしょ。」









「・・それか、俺に家を知られるのがイヤなの?」



二宮さんは首を傾げる。

その真っ直ぐな瞳から、目を離せなかった。




「や、そういう訳じゃないけど…」


引き込まれるようにただ、目を合わせる。
暗くても、やっぱりわかる。

色素の薄い、栗色の目。


「けど?」


その後に続く言葉も、思い付かない。

・・・ズルイ。




「一応女の子なんだから黙って送られればいーの。わかった?」



黙り込む私が可笑しかったのか
少しだけ、クスリ、と笑うと

優しく頭をポン、ポンと撫でられた。




一応、が付いているのがなんとも二宮さんらしくて頰が緩んでしまう。


のと同時に、頭を撫でられるなんていつ振りだろう?


恥ずかしくて、胸がキュンと疼いた。






二宮さんはきっと、
誰にでもこういうキュンとすることを
すんなり出来ちゃう人。

そんなこと、痛い程分かっているのに。


少しでも、期待してしまう自分がいる。




ダメだ、ダメだ




これ以上二宮さんといると、
きっと、好きになってしまう。


恋愛は、しばらくお預けだと決めたのに。


男の人は信じないと、心に決めた筈なのに。





隣を歩く二宮さんの横顔をチラリと盗み見ると

どうやら何かを口遊み始めた。



鼻にかかるその優しい声が、また、甘くて
どこか、儚げで。


誰の、何の、歌なのかは
判断することはできなかったけれど
優しくて、切ない曲調だった。


まるで、二宮さんみたい。



甘そうに見えて、どこか、儚い。

優しいのに、どこか、冷たい。






「ありがとうございました。」


マンションの前で、二宮さんにお礼を言うと
彼は、名残惜しむような表情はひとつも見せずに


「またね〜。」



と、立ち止まることもなく、
くるりと背を向けると去って行った。

中途半端に期待させといて、最後は呆気ない。

残酷だな、と思った。






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作者名:べに | 作成日時:2017年2月24日 8時

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