１１.バレた。 ページ11
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日付が変わる少し前に田中さんと別れた。
送って行くよ、と言ってくれて。
その親切心には、申し訳なかったけれど
丁重にお断りした。
一刻も早く、一人になりたかった。
いつからこんなに、
寂しい人間になってしまったんだろう。
虚しくなる。
たまに、とても、虚しくて切なくなる。
足元を見つめながら
ゆっくり、ゆっくり歩いた。
今日は電車じゃなくて、歩いて帰ろうかなぁ
そういう気分だった。
まだ冬の肌寒さは残っていて
時折吹く冷たい風が、心にも染みた。
「なーんで今日来なかったんだよ。」
足元を見つめてたから
前を見ていなくて、急に現れた革靴と
聞き覚えのあるその声にハッと顔を上げた。
「に、二宮さん…」
少しだけ不満そうに不貞腐れる二宮さんが
私の前を通せんぼするように、立っていた。
「どうして…」
口を尖らせる二宮さんが
不覚にも、可愛いと思ってしまう。
ダメ、ダメだよわたし。
この人は、絶対に悪魔なんだから。
「火曜と木曜は絶対来るよってマスターが言うからそのつもりで待ってたのに来ねぇし？クソ野郎め、と思って店出て歩いてたら亀みたいなスピードで歩いてる、そのクソ野郎がいるし？」
「クソ野郎って…」
ほら、そんなに仲良くもないクセに、
不穏当な発言。
ほんとに、失礼しちゃう。
「私、待っててなんて言ってないです。」
「うん、言われてないよ。」
「だから、そんな事言われても。」
「うん、そうだろうな。」
さっきのような可愛らしさは消えてしまって
素っ気なくて、冷たい返事。
急に冷たさを持つ二宮さんの言葉が
少しだけ、怖かった。
二人とも無言になって、気まずい空気が流れた。
特に話すこともないし、どうしたらいいかもわからなかった。
そしたら、
「やっぱ、嘘だったんだな。」
そう二宮さんが鼻でふ、と笑うなり言い放った。
「へ？」
何の話か分からなくて
隣を歩き始めた二宮さんの様子を伺う。
「お前、帰る方向、曲がる方の道つったけど、やっぱ俺と一緒だったんだ。」
「あ…」
忘れてた…
火曜日に会った時、帰り道嘘ついた時の事が
急にフラッシュバックする。
やばい…
今歩いてる道は、バーから直進する道の延長線上にある。
二宮さんの声がいつもより低くて、
顔が見れなかった。
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作者名：べに | 作成日時：2017年2月24日 8時
