八十七話 ページ37
「せ、先生…行かせちゃって良いんですか…?」
寂雷が部屋の電気をつけると一二三に支えられてソファーに座った独歩は動揺したままそう言った。
「…これ以上は君達の命の保証が出来ないからね、手を引かせてもらったよ。」
「…………さっき、中王区がどうとか言ってたっすよね」
一二三は動揺しながらも今一番重要になった事を思い出して話す。
「そうだね、質問で足止めしようとしていたらそんな話しが出てきたね。中王区が神羅くんを探している、と」
「……だとしたら、バトルの時連れて行くとバレるんじゃ……」
「………………取り敢えず、話はまた明日しようか。…あと独歩くん、明日は休みなさい、私から連絡を入れておくから。首に跡がついたままだと不味いだろう?」
「えっ、跡…?手の……?」
「うっわー……くっきりー…………」
「えっ、えっ、嘘だろう!?」
「残念ながら本当だからね……」
そう言われて独歩は慌てて洗面台へ行くとくっきりとBloody Todに絞められた手の跡がついていた。恐らく冷やしても何をしてもこの後にあざでも出来てしまうだろう。スーツを着ても目立つので会社に行くのはオススメ出来ない。
「………………たし、かにこれじゃ出勤は……」
「この際だから休んじゃえって〜!元々休みだったんしょ?なら大丈夫大丈夫、元の予定に戻っただけ〜!」
しょぼくれたまま戻ってきた独歩の背中をバシバシ叩きながら一二三は励ます。
「…さ、取り敢えずもう一度寝ようか。もう2時になってしまう。」
「あ、はい!」
「おっやすみー」
そうして三人は朝になれば神羅に戻ることを祈りながら眠りについた。
『…………依頼、達成。夜明け……時間切れ。』
彼は仕事着に着替えるとマンションの一室で自身で倒したかの様な形で着物の詰まった桐箪笥に押しつぶされ、人間から誰かもわからない肉塊へと化したものを見下していた。
その写真を一枚撮ると腰のポシェットにヒプノシスマイクをしまいマンションの窓から出て行く。
返り血一つなく、「これから死ななければならない、箪笥を使え」とリリックを使うことすらなくただ命令の様なことばで、囁いただけで相手は喜んで自らの死を選んだ。
恐ろしい力である。
『(活動、停止)』
夜が明け、空が夕刻のように染まる頃、ヨコハマ郊外の裏路地に服が汚れるのも顧みず体育座りで顔を膝に埋めるとその青い双眸を閉じた。
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伏見桜(プロフ) - 鳳李千歳さん» ありがとうございます!少々雑な過去回になってしまいましたが…wこれからもよろしくお願いします! (2020年4月6日 7時) (レス) id: 5f2347556f (このIDを非表示/違反報告)
鳳李千歳(プロフ) - 続編おめでとうございます(≧∇≦)bこれからも頑張ってください!夢主くんの過去?がわかった瞬間驚愕しました!いつも応援してます! (2020年4月5日 2時) (レス) id: 94a41c4f40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伏見桜 | 作成日時:2020年4月4日 11時