in the office ページ36
松本さんにやっと気持ちを伝えることができて。
いわゆる「お付き合い」をすることになって二週間。
なんだか地に足がついていないようなふわふわした気分。
表向きは何も変わらない。
「A、メールで送った内容確認したか？」
「すみません、まだです。
すぐに確認します」
「午後からの会議の内容だから、早くしろ」
仕事では、私は松本さんの「部下」だし。
相変わらず厳しい。
メールを確認すると、今日の会議の内容に、二、三変更があった旨が書かれていた。
メモをとりながら画面をスクロールすると、最後の一行に
「今日仕事終わったら連絡する」
とだけ書いてあって心臓が、どくん、と跳ねた。
ちらり、と松本さんを見ても、何事もなかったかのように仕事をしている。
「確認、しました」
「よろしく」
「……はい」
一瞬だけ見せた笑顔は、優しくて、私の心臓はまたドキドキうるさくなる。
と、同時に。
急に欲張りになる自分。
あの笑顔を他の人には見せたくないな。
この間まで、気持ちを伝えられたことだけで満足していたのに。
どんどん欲張りになる。
仕事を終えたあと、会社からは少し離れたこじんまりしたイタリアンのお店で松本さんと落ち合う。
うちの会社は特に社内恋愛にうるさいわけではないし、お互いに「秘密にしよう」って言ったわけでもないけど。
今でも松本さんのアシスタントとしての仕事もあるし、周りに気を遣わせないためにも、その方がいいんだろうなって思っていた。
「いつ店頭に並ぶんだっけ、あのクッキー」
「来週です」
「CMの試写見たけど、すごく良かった」
「二宮さんが聞いたら『当たり前でしょ、俺が作ったんだから』って言いそう」
「…確かに」
二人で話をすると、必然的に仕事の話が多くて。
それはまあ、当たり前というか仕方のないことなんだけど。
なんとなく付き合っている実感がわかない、なんて思うのは、やっぱり欲張りなのかな。
食事を終えると、タクシーを捕まえてくれる。
「気をつけて帰れよ」
「……はい」
「ん？どうした？」
「いえ、おやすみなさい」
もっと一緒にいたいって。
もっと近づきたいって。
思ってるのは、私だけ？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1316人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年3月22日 18時
