50.屋上デート ページ20
週明け、オフィスで顔を合わせた松本さんはとても普通だった。
「A、この間の年間売り上げの資料、グラフもつけてくれるか？」
「……はい、すぐに」
翔のことを改めて聞かれることもなく、抱きしめられてキスされそうになったことも、まるでなかったかのような。
仕事上では今まで通り普通に接してくれた。
大人の対応なんだろうな、と思う。
でも私はそこまで気持ちの切り替えもうまくいかず、ただひたすら目の前の仕事に没頭してあまり深く考えないようにした。
そんな風に何日か過ごしたあとの、お昼休み。
何か買って来ようかな、それとも近くのお蕎麦屋さんでも行こうかな、と思っていたら。
「Aちゃん」
相葉さんがにこっと笑って立っていた。
「俺とデート、してくれる？」
「え？だってまだ仕事中……」
「屋上デート」
相葉さんが有無を言わせず、すたすた歩くので慌てて後を追う。
うちの会社は自社ビルで、屋上も自由に出入りができる。
今日は晴れていて空が高く、気持ちがいい。
相葉さんが、うーん、と伸びをした。
「あ、そうだ！パン食べる？
午前中外出してたとこの近くに、美味しいパン屋さんあるって聞いて買って来たんだ」
相葉さんが手にしていた紙袋をよく見ると、
知っているお店のロゴ。
「知ってます、ここ！同級生のお店なんです」
「え？そうなの⁉あのほわんとした人？」
「ほわんとした人です」
「そうなんだー！好きなのどれでも食べて食べて」
相葉さんが次々にパンを出して、ベンチに並べてくれる。
「あ……」
「ん？どーかした？」
「卵サンド……」
「卵サンドがいいの？はい！」
勢いよく渡されて、フィルムをはずすと一口かじる。
なめらかな卵とほどよいマヨネーズの酸味が口いっぱいに広がって。
同時に大野くんのふにゃっとした笑顔を思い出し、思わず涙ぐむ。
「……Aちゃん？」
「あ、はは。今日風強いですね。
目にゴミが」
「松潤と、やっぱり何かあったんでしょ？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1316人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年3月22日 18時
