48.誤解 ページ18
「は？何それ」
「双子の姉弟じゃなくて、恋人。彼氏彼女。カップル」
翔の話を要約すると、仕事でお世話になったことがあるフランス人シェフのジャンさんが、表参道に新店舗を開くことになり。
そのレセプションパーティにぜひパートナーと一緒に、と呼ばれたとのこと。
「そんなの本物の彼女、マリナちゃんと行ったらいいでしょう」
「そのつもりだったのに、ちょっとまあ喧嘩、してさ」
「喧嘩？早く仲直りしなよ」
「ほっといたらそのうち機嫌直るだろ」
「じゃあここまでしなくても、一人で行けば？」
「一緒に行くって返事したし。
それに自分で言うのもなんだけど、俺ジャンに狙われてる気がするんだよねー」
「狙われてる？」
「仕事の付き合い以上のものを求められてるような」
「……」
さっきのマサトさんといい。
「翔って男の人にもてるの？知らなかった…」
「俺も知らなかったよ…」
「まあ、そういう事情なら仕方ないか」
「恩に着る！」
と、言う訳で表参道のおしゃれなお店に、翔と連れ立ってやって来た。
ジャンさんは、体格のいい優しい目をした人で、翔が私を紹介すると、
「翔の大事な人、とってもキュートね」
と、言ってくれた。
そう言われると…ちょっと悲しげだったような気もするけど。
挨拶を済ませたら、後は立食形式で自由にしていていいようで少し力が抜けた。
「ジャンさん、翔のことそんなに執着してるように見えなかったけど？」
「二人になったらなんかそういう空気になんの」
「……もういいんじゃない？」
翔はずっと私の腰に手を当てていて、なんだかこそばゆくてむずむずする。
「敵を欺くにはまず味方から」
「もう誰も見てないと思うけど」
と、その時、背後からよく知っている声。
「A？」
振り向くと、そこには松本さんがいた。
「松本さん？どうして」
「ジャンとはプライベートで付き合いがあって。仕事でもアドバイスもらったりするんだ。
Aは？」
話しながら、松本さんの視線が翔にうつる。
「俺について来てもらったんですよ。
パートナー同伴で、と言われたので」
「あ、松本さん。これは」
「Aの会社の方？いつもAがお世話になってます」
「ちょっと、翔」
「間違ってないだろ」
「そうだけど」
松本さんは私たちのやり取りを見て、じゃあ、と会釈して行ってしまった。
なんか絶対……誤解された気がする。
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年3月22日 18時
