第665話 留守電。 ページ5
マックスコーヒーを抱きしめて
しばらく泣いたあと
私は反対側のポケットから
ケータイを取り出した。
A「……」
…昨日の夜から電源を切ったまま。
チャンミンに「おやすみ」を言って
部屋に戻る途中に会ったユチョン。
あの時に私が言った言葉は
純粋に心配してくれたユチョンを
傷つけてしまったかもしれない。
だけどあれがあの時の私の本心で
いくら心配してくれても
"ユチョンはダメ"だった。
ユチョンはきっと私が笑えるまで
そばにいようとしてくれると思う。
だけどそんな都合よく頼りたくないし
それをわかっててもユチョンは
そばにいてくれると思う。
だからこそユチョンはダメで…
本当は１人ぼっちなんて嫌だよ。
チャンミンと一緒にいたいよ。
"家族"って言ってくれる
みんなと一緒にいたいよ…
だけどダメなの。
ユチョンといる事もみんなといる事も
実家にいる事さえも。
みんな、私の傷を見て
必要以上に優しくしてくれる。
私を"被害者"として見てるから。
被害妄想…そんな汚い気持ちがある反面
みんなの優しさに甘えてる自分がいて
矛盾した自分の気持ちを自覚する度
私はどんどん自分を嫌いになっていく。
そしてそんな私をチャンミンも
いつか嫌いになってしまうと思うから…
A「う…うぅっ…(泣)」
チャンミンが「会わない」と言ったのが
私達２人のためだってわかるのに…
会いたい気持ちが募ってく。
苦しいよ…寂しいよ…
私はチャンミンの声が聞きたくて
何度も電話をかけようとする衝動を
抑える為にケータイの電源を切っていた。
だけど「やっぱりメールだけでも…」と
また電源を入れてしまう。
―――― ピッ
A「……」
待受画面には
留守電が１件あることを表示するマーク。
これはユチョンからのものだって
私はわかってる。
部屋で１人泣いていた時に
ユチョンからの電話に出れず
小さく流れてくる声をただ聞いていた。
きっとユチョンはあえて
韓国語で話したんだと思う。
頭がいっぱいの私に重荷にならないよう
わからない言葉で話してくれたなら
それもユチョンの優しさ。
それに、一緒に泣いてくれた。
その優しい低い声を聞くだけで
あの瞬間だけでも支えられたから…
私はずっと消えてしまわないように
宝物のユチョンの留守電を保護した。
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作者名：natsu
| 作成日時：2012年4月14日 0時
