ピアス (ページ26)

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ren side
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『負けた…』

何においても勝てない平野に

これだけは勝てるような気がしていた。

でも、ゴールテープを先に切ったのは

間違いなく平野だった。

紫耀「俺、勝ったから。約束な」

『…おう』

自分からしようと言った賭けなのに

その約束を破ってしまった俺。

それを正直に言えない所も情けないと思った。

紫耀「振られても俺は諦めねぇから」

『…。』

Aが俺のことを好きじゃないこと、

ただのお情けで告白を受け入れてくれたこと

そんなことはもう既にわかっていた。

それに、Aが平野を好きだってことも。

平野と話しているときの笑顔。

あの笑顔が俺に向けられたことは一度もない。

卑怯な手を使ってAと付き合った俺とは違い、

真っ直ぐに、素直に気持ちを伝えようとする平野。

Aが平野を好きになるのは当たり前だ。

紫耀「…はぁ。お前、強いよ」

『…え？』

紫耀「Aのこと、本気で好きじゃん」

そんなこと言わないでほしい。

俺はただの弱虫だ。

卑怯でずるい、情けない人間だ。

『…お前の方が強いやん。俺なんかよりずっと』

そう言ったときには

もう既に紫耀は退場門へ向かっていて

Aの元へ行こうとしていた。

＿気持ちを伝えに。

平野から告白されたら

Aは一体どんな反応をするんだろう。

俺のことなんてどうでも良くなってしまうのか。

もうそれでいい。

この際、俺のことを振って欲しい。

やっぱり平野のことが好きって正直に言って欲しい。

そうじゃなきゃ

俺はこれから一生自分のことを恨んでしまう。

なんて自分はワガママなやつなんだろうと思った。