ピアス (ページ25)

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紫耀「俺、Aのことが好きだ」

静かな体育館の中で紫耀の声が響く。

予想もしていなかった言葉に

自分の胸の鼓動が

どんどん速くなっていくのを感じた。

『紫耀…』

紫耀「ごめん、急に…」

『…。』

紫耀は本当に強くて、優しくて

どんなときも私のことを助けてくれた。

そしてその度に紫耀に惹かれていった。

私は紫耀のことが好きだ。

そんなことは既に自分でわかっている。

でも、紫耀よりもずっと長い間側にいてくれた廉には

どんなことがあっても恩返しがしたい。

『…ごめん。私今付き合ってる人がいるの』

紫耀「…そっか」

『紫耀なら私なんかよりも良い人が見つかるよ』

頭の中では明るく言ったはずなのに

実際に口から出た声はひどく震えていた。

自分はなんて情けないんだろう。

紫耀「…誰と付き合ってんの？」

『…廉。廉だよ』

紫耀「…ふうん」

さらに静けさを増したような体育館。

私がごめん、というと

紫耀は頷きながら体育館を出ていった。

『…こんなの、酷いっ』

みんなが楽しそうな顔をして

校庭の中心に集まっているとき

私の頬には一筋の涙が流れた。

どっちにも嘘をついて

さらには自分の気持ちまで隠して

私は一体何をやってるんだろう。

『ごめん、本当にごめんね…』

ついに1人になってしまった体育館で

私は涙を拭いながら2人に謝った。

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