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光 「それで……元の世界に帰りたいって思うことはあるの?」

A 「……はい、とも いいえ、とも言えません」

光 「それはなんで?」

A 「それは……」



私はここまで言って言葉に詰まった。
取材が始まってから嫌な話はされなかったが、今の質問には何故かすごく戸惑った。


帰りたいという思いはある。家族もいるし、友達にだって会いたい気持ちは消えたりしない。
ただ、ここでの生活も私の一部になってきている今、このままここに居たらどんな未来が待っているのだろうと気になっているのも本当だ。

だからと言って、私がどちらの世界で生きるのが選択出来るものなのかも分からない。
突然ここへやって来たのだから、突然帰る可能性もあるのだ。

そんなことは初めから分かっていたし理解していたことなのだが、改めて考えるとどちらか一方の世界に別れを告げる日がやって来るのかもしれない。


光 「…今日はこのくらいでやめにしよう」


長い沈黙を破った光さんは立ち上がりキッチンへと向かった。


光 「お腹空いてるだろ。夕飯食べていくか?大したもんは作れないけど」

A 「あ、ありがとうございます」


光さんの後ろ姿から目を離しふと部屋の隅に置いてあった鏡に視線を向けると、目の奥まで暗くした自分が写っていた。そして、よく見ると頬には一筋の光が反射していた。
自分では全く気づかなかったが、こんなに分かりやすく感情が顔に現れていたなんて。


キッチンからはジュージューと何かを調理している音が聞こえてきた。
取材を切り上げ、私と距離を取ってくれた光さんの優しさに改めて悪い人ではないと確信することができた。

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春妃(プロフ) - こんなに面白い作品は久しぶりです!気づいたら一気読みしてしまいました!更新を楽しみにしてますが無理はせずに頑張ってください(* ´ ▽ ` *)応援してます! (2019年10月14日 6時) (レス) id: 37086665c7 (このIDを非表示/違反報告)
かちゅ(プロフ) - とっても面白いです!更新楽しみにしてます! (2019年5月25日 13時) (レス) id: b0ebd2074b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:べーだい*メガネ | 作成日時:2019年5月16日 11時

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