2冊目 ページ2
出会いは突然に、と言うけれど。私はあの出会いほど突然に、そして劇的に人生を変える出会いを知らない。
図書委員というポジションは私にとってちょうどいい。入学式から一週間、風邪をこじらせ休んだ結果ぼっちになった私には。コミュ障ではないのだけれど、どうも仲のいい友達を作るのがうまく行かないのだ。
そんなぼっちに優しい図書委員ポジの利点は何個かある。
まず図書委員は休み時間に当番で時間を潰せる。ぼっちだからではなく、当番なので一人なのだ。
しかも図書室なんてそもそも人が来ない。来ても私の仕事はカードを預かって整理するだけだ。
そして、図書委員なだけで文学少女感が出る。つまり私はぼっちなのではなく、本を読むのが好きな文学少女感を出せるのだ。幸いにして私は読書が好きな部類だ。
他の利点として、図書委員はそこまで人気じゃないからリスクもなくできること、委員をやると内申が上がることなんかが挙げられる。
こうして無事2年目の図書委員になった私は、さっきまで図書委員の仕事もそこそこに小説を読んでいた。そして、今まさに図書委員が利点ばかりでないことを思い知った。
目の前に、天下の風紀委員長様が立っていたのである。
「何、読んでるの」
終わった。お母さん、お父さん。そして犬のタローとお兄ちゃん。今までありがとうございました。私はここまでのようです。
「…ゆめじゅうや、です」
「夢十夜ね」
からっからの声で答えると、目の前の風紀委員長様は納得したようだった。そのあと彼はカウンターに本と図書カードを置いた。びくつきながらいつもの倍速で仕事をこなす。というかこの人本読むの？意外すぎる。空いた時間全部人殴ってそう。絶対言わないけど。
「かしだしきかんはにしゅうかんです…」
「そう」
風紀委員長様は興味なさそうに頷くと、本を受け取って図書室から出て行った。
…あれ、私生きてる？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もっち | 作成日時：2018年5月27日 22時
