過去２ ページ30
ふらふらと向こうから歩いてくる男と女がいた
おそらく夫婦だろう
どちらも今はやりの伝染病に侵されていることは幼い私にとってもわかっていた
男の腕の中には私と同い年くらいの子供がいた
…その子供は瘦せこけていて男子か女子なのかもわからないほどだった
母はかぶっていた頭巾を彼らを見て、顔を見せないため深くかっぶた
何しろ街の者には顔が知れてしまっているからだ
もう、彼らは助からないと母は判断したのだろう
然し男は私を見るなり血相を変えて寄ってきた
「な、なあ‼ 君は伊原診療所の子供だろ、この子を、この子を診てくれないか!! お、お願いだ!!」
母の私を握る手はどんどん強くなり、少し震えていた
この時の私は強く逞しく生きる母にも恐れることがあるという事に衝撃を受けた
なに、母だって人間だ
…然し私はあることに気づいてしまった
この男は母にむっかて暴言をはいた者だった
私は心の中でぽつり、浮いてしまった言葉を吐いた
「自業自得だよ、おじさん かあさんはいったはずだよ それを無視してそうなったのは、残念だったね もう助からないよ」
みるみるうちにその夫婦の表情は曇りに曇り、今の空模様と何一つ変わらなくなった
因果応報、自業自得、もうそれ以外に彼らに向ける言葉はなかった
「いこう、かあさん この人たちは何も言わずとも 骸となる」
母の顔は見なかった
でも、一瞬時が止まったかのように思えるほど母の震えはなかった
私は母の腕を引き、何処へ向かうのかも宛てもないまま、真っ直ぐに歩いた
・・・
「…少し休みましょうか、ごめんなさいね んもう、年を取ると体力がなくなってしまうわ」
そっと笑った母の額には瘡蓋があった
私はそれを見て、ドキッとしてしまった
まさか
だが、私には、「そんなこと」を、吐けるはずもなかった
「山を、山を越えたんだもの 歳とか、関係ないわ、かあさん」
「そう、ね 流石、私ととうさんの子供だわ」
そう言って優しく私の頭を撫でた
白い母の腕に映える赤い花のような瘡蓋を携えて
続く (更新停止中)
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煎餅布団(プロフ) - レモンさん» ありがとうございます！更新頑張ります…！ (2018年5月15日 23時) (
レス) id: 2de6b0e185 (このIDを非表示/違反報告)
レモン - 応援してます！更新頑張ってください!!d=(^o^)=b (2018年5月15日 23時) (レス) id: c6018d0b79 (このIDを非表示/違反報告)
煎餅布団(プロフ) - ジンジャエールさん» ありがとうございます！私の作品で感動してくださるとは…！感無量です泣 コメントありがとうございました！ (2018年1月20日 11時) (レス) id: 2de6b0e185 (このIDを非表示/違反報告)
ジンジャエール - とってもおもしろいし感動しました！続きを楽しみにしてます！ (2018年1月20日 8時) (レス) id: ab2c526f84 (このIDを非表示/違反報告)
煎餅布団(プロフ) - 紅夜桜さん» ありがとうございます！ 今夜、更新します！お楽しみに！← (2017年11月30日 15時) (レス) id: 2de6b0e185 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：煎餅布団 | 作成日時：2017年10月8日 14時
